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私の登記申請書チェック方法

はじめに

私はラッキー@劣位下等な職能集団という名で鍵垢ですがXで主に同業と交流しているものです。
谷口先生のコラムを見て、私も書いてみようかと思いました。
ちなみに谷口先生とは合格後の中央研修の時に席が隣だった仲になります。
同業の方からのフォローはウェルカムですので承認申請お待ちしています。

さて、私も司法書士になって10年を超え、売り上げの8割が不動産登記となっています。しかし司法書士になりたての頃、配属研修先が債務整理メインの事務所であったため、登記申請についてほとんど学ぶことはできませんでした。

いわゆる勤務司法書士として、その後別の事務所のお世話になったのですが、今度は決済事務所で、登記の実務経験ゼロの状態から不動産取引に関する移転書類等の作成・チェックに従事することになりました。

とはいえ、登記申請書類の最終チェック者は事務所のボスであり、自分の名前で申請していないという点、また、特にチェック方法を指導・伝授されたわけではないので、独立開業をしてもミスが多く苦労をしました。開業して早10年、自分なりの補正を減らすにはどうしたらいいか、登記申請書類のチェックについて、こちらのコラムにてどなたかの一助になればと思いこの度寄稿させていただきます。

まず、私の事務所では、補助者が申請書類をセットし、オンライン申請前の状態で私の手元に申請書が回ってきます。

ポイント①

申請情報は印刷された状態で回ってきますが、添付情報(登記原因証明情報・登記識別情報添付データ)については私が印刷をするようにしています。
これは添付情報の記載チェックとあわせて、添付情報の添付漏れを防ぐ意図があります。
私の業務ソフト上、注意が出る仕様になっていますが、何かの間違いで無視して申請するとも限りません。
X上でも、登記原因証明情報を添付せず申請してしまったという方を見かけたこともございます。

ポイント②

書類の場所は
左側に登記情報、添付書類、右手側に印刷した申請書、登記原因証明情報、登記識別情報の添付データを置いています。

左手側の資料を基に、右手側の申請情報をチェックしています。

申請人の氏名住所は印鑑証明書、住民票と照らし合わせます。

抵当権者等の法人の代表者は委任状と照らし合わせます。

不動産の表示も登記情報でチェックします。

不動産番号はすべて消しています。これは、不動産番号の取り込みミスは補正ができないと聞いているからです。(なお存在しない不動産番号の場合は補正可能とのこと)

登記申請書のチェックが終わったら、登記申請書を登記情報の土地と建物の間に移動します。

これは、添付の登記原因証明情報の記載をチェックするのに、申請書の記載とも照らし合わせているからです。
所有権移転登記の登記原因証明情報だけでなく、金融機関が準備した抵当権設定契約書についても登記事項に関する記載の全てを確認しています。
これは私が過去に株式会社商工組合中央金庫を「商工組合中央金庫」の名称で登記をしてしまったことがあるからです。

債務者、設定者の記載について契約書の記載に誤りがあることがあります。
友人の銀行員から「抵当権設定書類で設定者が住所を書き間違えて、司法書士から補正/取下げになったという報告を受けたけど誰が悪いの?」という質問を受けたことがあり、当時開業間もない私も、抵当権設定書類の当事者の表記にそこまで気を配っていなかったこともあり、背筋が凍る思いをしました。

また、ごくたまにですが、〇丁目が抜けている方もいらっしゃいます。(*設定書類は授受時、補助者が持ち帰った際に優先的にチェックしています。)
そのため、添付漏れを防ぐために添付情報を印刷するのと併せて印鑑証明書と照らし合わせてチェックをしています。
(余談ですが、会社の登記が1-1-1で設定契約書を1丁目1番1号で記載したときに補正になったという話を聞いたことがあります。*逆は可)

自分で作成した登記原因証明情報だけでなく、金融機関が用意した抵当権設定その他契約書であっても、全ての登記原因証明情報について、名義人については印鑑証明書や委任状で、登記の内容、不動産の表示については申請書の記載や登記情報と照らし合わせてチェックをしています。

その他、共同根抵当権設定だと、「共同として」の文言、
普段お付き合いのない金融機関ですと「設定した」の文言*まれに契約書本文の小さい文字での記載パターンあり
抵当権で債務者が複数の場合「連帯」の文字の確認をします。

これにより、申請書の記載はあっているけど登記原因証明情報の記載が間違っていて補正、というのを防いでいます。

ポイント③

添付データの登記識別情報について
物件と甲区・乙区、受付日付、番号をチャックしています。
登記識別情報の添付漏れを防ぐのと、甲区・乙区を間違えて登録されていることがあるからです。

ポイント④

最後に登記情報を右手側に移動し、登記情報の登記名義人の記載について印鑑証明書・住民票・委任状の記載などでチェックしています。

よく似た文字の誤記の有無、田舎ですと同一敷地内で住所変更をし、1番1号の住所から1番2号の住所に変わっていることもあるからです。(5物件のうち1物件だけ違うとかもまれに目にします)
それによって、更正登記、変更登記を見落とすことを防いでいます。
物件数が多いと大変ですが・・・物件数が多い時こそすべきチェックだと思います。

ただこのチェックによって登記情報が汚れてしまうので、勤務の方はボスに嫌がられるかもしれません。

あとは、細かいチェックでいうと、
抹消時の抵当権、根抵当権の再確認、委任状の日付漏れ、暗号化復号の記載、金融機関委任状の識別授受の旨、(根)抵当権設定の時には「サイリソンム(債権額・利息・損害金・債務者)/キョクサイム(極度額・債権の範囲・債務者)/テイ(オウ)セッ(カイ)(抵当権者・設定者)」も再確認しています。

ソフトで申請情報を触った際に、抵当権者が脱落したまま登記申請をし、完了してしまったことがあるからです。*職権更正されました

そのため、受験時代からお馴染みの?サイリソンムやキョクサイムの他にテイ(抵)オウセッ(設)カイも頭の中でのチェックに追加しています。

最近は振込決済による方法も増えましたので、心配性な私は、書類が整ったタイミングと、申請前の2回同じチェックをしています。

同期からは過剰チェックだろ!と言われることもありますが、補正対応で法務局、場合によっては依頼者とやり取りする方が私にはストレスであり、非効率的との判断です。

なお、それでも補正がゼロかというとそんなことはなく、私のチェック法が完璧なわけではありません。
また、司法書士事務所ごとに申請の順序も違うでしょうから、一度実際に書類を上記のとおりに動かして見た後で、アレンジしていただき、皆様なりの最善のチェック法を編み出す参考に少しでもなれば幸いです。

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