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『司法書士になる』という夢を、夢のままで終わらせないために

皆さま、初めまして。
司法書士の森 宏彰(モリ ヒロアキ)と申します。

かつて受験生だった過去の自分へ、そして現役の受験生に向けて、どうしても伝えておきたいことがあります。

僕は令和6年度の司法書士試験に合格し、その4ヶ月後に東京23区で独立開業しました。周りからは「もう独立したんだ、早いね」と言ってもらえましたが、司法書士を目指してから遥か10年以上が経過していました。正直、「やっと司法書士になれた」という気持ちでした。

「夢は叶わないから、夢なのかもしれない。」
「もう無謀な夢をみることなんてやめよう。」
「司法書士なんて目指さなければ良かった。」

この記事を読まれている方の中には、今まさにそう思っている方がいるかもしれません。これは僕が合格するまで、何年も怨念のように思い続けていたことです。
「夢は逆夢」なのだと。

実は僕も一度は夢敗れ、司法書士になることを諦めたことがあります。
自分だけは受かると信じていたのに。

「何者かになりたい」という願望

遠い過去に遡ると、幼少期から「何者かになりたい」と思っていました。
おそらく少年漫画の影響だと思います。自分は世界の主人公だと、ずっとそう信じていました。

大学院生のとき、シンポジウムで弁護士の姿を目にしました。なるほど、個人に与えられる国家資格で世を渡り歩く「士業」であれば、何者かになれるのかもしれない。
どうせなら難関資格に挑もうと思い、士業の中でも、実家が法務局のすぐ近くにあり、子供のころから馴染みがあった司法書士を志すようになります。

『大丈夫、きっと自分には才能がある。難関と言われるぐらいがちょうどいい。1年でサクッと受かって、すぐに独立しよう。』

独立後のことを見据え、新卒で経営コンサルに入社し、数年後に司法書士事務所へ転職しました。そして永遠とも思える受験生生活が始まりました。

純粋であることの罪深さ

今思うと甘い見積りですが、まだ予備校で民法の講義すら終えていない段階で「司法書士試験なんて何年もかかるものではない」と本気で思っていました。純粋に自分は一発合格できると信じて、勉強中も合格した後のことばかり考えていました。
まさに取らぬ狸の皮算用です。

1回目の試験では基準点も超えていないのに「まだ本気出してないだけだ」と思っていました。
2回目の試験のときも「基準点を超えたから、来年には受かるだろう」と試験をまだ甘く見ていました。

この頃は本試験を終えたら1週間だけヘコんでみて、その後は夏休みを満喫し、新年を迎えた頃になって「よし、今年こそは本気出す」ということの繰り返し。
そして模試の点数が伸びて『本番』と挑んだ3回目の試験に落ち、試験の難易度を肌で感じて怖くなってきます。それでも周りには同じような受験仲間の補助者がたくさんいるし、司法書士資格者の先輩たちもずっと応援し続けてくれる。

「君はすでに実力があるし、あとは運だけ。順番待ちだよ」

たしかに実務も経験しているし、今年は運が悪かっただけかもしれない。いつかきっと自分の順番が来る。受かりさえすれば全て取り戻せる。

受かりさえすれば…。

そして、夢敗れる

30代になり、いよいよ焦り始めます。
4回目の試験前は、模試では当たり前のようにS判定の連続です。実力はほとんど頭打ちの状態なので、勉強しながら「今年が最後だな」と考えていました。

結果は不合格。

これまで補助者として働く中で、たくさんの受験生の先輩・後輩たちが夢を諦め、去っていくのを見送ってきました。そしてついに、自分が去る番が来たのです。ここで初めて夢敗れたのだと悟ります。自分だけは絶対に諦めないと思っていたのに。

そして司法書士事務所に別れを告げ、国際系の企業に転職しました。人生の遅れを取り戻すため、無駄のない生き方をしなければならない。大学院では国際法を扱っていたし、イギリス留学もしたことあるし、これなら自分の経験を活かせるはず。

また新たな道で、ゼロから頑張ろう。

夢を見た代償

そして新しい生活が始まります。
もう司法書士のことを考えるのはやめよう。よく考えたら別に「司法書士」になりたかったわけじゃない。自分は何者かになりたかっただけ。

初出勤の日。都心にある大きな会社で周囲は活気に溢れていたけど、なぜか自分がひどく場違いな世界にいるように感じてなりませんでした。初日から「もう帰りたい、辞めたい」と思っていました。

脳裏に浮かぶのは、司法書士事務所の風景ばかり。猛暑でも嵐でも大雪でも、法務局や銀行を巡っていた記憶。月末の決済に同席して、時間ギリギリの登記申請に冷や汗をかいていた記憶。受験仲間と温泉で「いつか必ず司法書士になろう」と夢見ていた記憶。司法書士の世界に、心だけが取り残されていました。

ある日、会社の代表から「お昼に行こう」と誘われます。もしかしたら心配されていたのかもしれません。
しかし、それに応えることはできませんでした。これ以上いても迷惑になると思い、早退して、そのまま退職を告げました。

結局どこに行くあてもなく、古巣の事務所に出戻りすることになりました。

初めてここに入所したときは、未来への期待と根拠のない全能感に溢れていました。出戻りで事務所に足を踏み入れたとき、ようやく本当の意味で覚悟が決まりました。

「夢は逆夢」で終わらせない

時は過ぎ、令和6年。
7回目となる受験でした。午前択一・午後択一で大きく点数を稼ぎ、記述さえ足切りを通れば合格するはず。記述はそれなりに書けていた。でもこの年から記述の配点が2倍になっており、結果が全く分からない。

もしかしたら、受かっているかもしれない。いつものように、落ちているかもしれない。今までも散々期待した挙句、一度も合格できなかった。きっとまた落ちている。一生この繰り返し。

それでも僅かに期待を寄せて、結果を確認。
自分の番号が…あった。

カフェで合否を見ていたのですが、思わず立ち上がり、そのまま足が震えて座れなくなりました。とてつもない心臓の鼓動を感じました。どれだけ不合格の結果を見ても涙一つ出なかったのに、長い受験生活で初めて涙が溢れました。

その日のうちに、色んなことを心に決めました。すぐに独立開業しよう。仲間を集めて、次の夢を見よう。誰かが困っていたら、手を差し伸べよう。そして司法書士の業界全体の為にも働こう。

今は、司法書士でいられることが幸せです。
ようやく何者かになれた気がします。

最後に

今回の執筆依頼では「夢を諦めない受験生にエールを」というテーマをいただきました。
しかし、ここまで読み進めてくださった方には、「エール(応援)」というより「警告」にも感じられたかもしれません。

司法書士試験の世界では、よく「運の試験」「いつか順番が来る」と言われていると思います。たしかに午後の記述試験は運の要素もあると思います。振り続ければいつかホームランが打てる日が来るかもしれません。
でも、これは受験生への優しい嘘なのだと思います。

合格に本当に必要なのは「覚悟」です。

過去の僕と同じように、自分だけが世界から取り残されていく恐怖と絶望を感じている方もいらっしゃると思います。
足踏みし続ける人生に怒りと焦りを感じて、心臓をギュッと掴まれるような痛みに耐え忍んでいることと思います。

もし、あなたがその地獄から本気で抜け出したいのなら、今日、今この瞬間から全力で勉強に取り組んで下さい。夢を夢のままで終わらせないために。
「司法書士」になる、その覚悟があるのなら。

挑戦する皆さまを、心より応援しております。

【執筆者紹介】

司法書士ソフィア事務所
代表司法書士 森宏彰
公式HP
Instagram

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