はじめに
まず初めに、簡単に自己紹介させていただきます。私は平成25年度行政書士合格、平成26年度司法書士合格し、総合士業グループに所属している司法書士法人に勤務したのち、司法書士・行政書士(兼業)事務所を開業しました。
総合士業グループには行政書士事務所もありましたが、各法人がそれぞれ専門特化していたため、在職中は司法書士としてのキャリアのみで、行政書士としての経験はありません。そのため、行政書士の実務経験はないまま開業しました。
兼業事務所のイメージとは
私が、就職先を探している際に感じていたことですが、兼業事務所は両業務を幅広くなんでもやっているというイメージがありました。単純に業務の幅が2倍のイメージです。そういった事務所で経験を積めば、開業した時にそれだけ手広くできそうなんて考えたりもしました。
行政書士業務と司法書士業務
行政書士業務と司法書士業務は親和性が高いのはご存じの通りかと思います。
例えば、会社設立+建設業許可や産廃許可の場合には、設立の相談から許認可を意識した事業目的を提案することができます。
経営管理責任者や専任技術者などを意識した役員構成の必要性にも気づくことができるでしょう。許認可までの一連のスケジュール管理がしやすくなります。
また、農地転用の場合には農転+所有権移転といった業務の流れがあります。
このように片方の士業だけでは完結できない業務について俯瞰的にとらえることができ、クライアントに対しても安心感を持っていただくことができます。
注意しなければならない点
私自身司法書士と行政書士の両方登録している兼業者です。もちろん、クライアントからお話をお伺いするときにも行政書士としてお聞きすることもあります。
そうした中で、基本的な許認可の案内をしたり、行政書士のいわば嗅覚は働きますが、行政書士業務の実働は所内の行政書士が専門で行っています。
面談時に業務の深さが垣間見えたらすぐにバトンタッチします。なぜならば、行政書士業務は司法書士業務と異なり、ローカルルールがかなり多く、業務範囲自体かなり広く、手数が多い(工数がかかる)ためです。
業務や業界風土が似ているようで似ていない。それが司法書士と行政書士です。
間違った進め方をすると大事故につながります。兼業だからそれぞれの実務能力に深みを持ち両方する。それもいいと思いますが、生半可に首を突っ込むとてんてこまいになる可能性が極めて高いと思います。
現在はどうか分かりませんが、登録当時所属している行政書士会支部では司法書士との兼業者は私だけでした。経営目線でいうなれば、しっかりとした目的をもって兼業しないとどっちつかずで不採算になると思います。
兼業事務所のメリット
クライアントから登記や許認可などのピンポイントではなく、司法書士・行政書士業務に跨るプロジェクトを一体としていただけることが最大のメリットかと思います。
そのため、プロジェクト完成に向けた業務フローを全体として見ることができ、一つの事業をやり遂げたという達成感を味わうことができます。
私は法人所属としてチームで動いているため、兼業事務所との親和性が高いと感じています。
最後に
司法書士事務所が十人十色であるように、兼業事務所にはそれ以上にそれぞれのスタイルがあろうかと思います。兼業事務所はそれ自体が一つの別のジャンルであると感じています。
このコラムが、司法書士・行政書士の兼業を目指す方や兼業事務所への就職を希望する方の参考になれば幸いです。