手続の実行
業務を受任したら、案件ごとに分けて管理しましょう。
管理方法は様々ですが、一般的には、クリアファイルを使って管理する方法や、封筒に入れて管理する方法が多いかと思います。案件の種類ごと又は案件の進行状況に応じて色分けするといった工夫も良いでしょう。
受託票
案件を管理する際には、受託票を作成し、情報を一元化すると効率的です。受託票を見ればその案件の情報や進行状況が分かるような内容にします。
案件名、当事者の住所、氏名、連絡先、期日といった項目は必須ですが、本人確認・意思確認の記録や業務フロー、ソフトと連動した番号などを盛込み、使いやすいようにカスタマイズするとよいでしょう。
受託票は、案件が終了したらファイリングしてまとめて保管しておきます。
こうしておくと、クライアントから数年後にその案件について質問を受けたり、リピートしてくれた時の記憶の喚起に役立ちます。
本人確認・意思確認
司法書士が業務を行う上で重要なのは、依頼者の本人確認と意思確認です。
これは、成り済ましによる不正な手続を防止し、当事者の意図しない手続を防止するのと同時に、司法書士に課せられた義務でもあります。
本人確認・意思確認の具体的な方法が定められているのは犯罪による収益の移転防止に関する法律や司法書士会の定める会則、規程です。
平成20年8月日本司法書士会連合会発行の「本人確認等に関する資料集」にまとまっていますので、これを参考にしながら執務を行うとよいでしょう。
本人確認・意思確認は上記を遵守しながら、その記録をきちんと残しておくことが義務付けられています。
ここで、注意しなければならないのは、記録の保存が義務付けられているからと言って、形式だけ整えて、実質的な面が疎かになってしまうことです。
本人確認・意思確認は、本来不正な手続きを防止するためのものです。
不正な手続きが行われてしまうと、クライアントの権利を保護することができないのはもちろんのこと、我々司法書士も損害賠償などの責任を問われます。
こういったことを防ぐために、本人確認・意思確認が大事なのであり、まず実質面が備わっていなければ意味がないのです。
実質面を備えた上で、形式面も整えていくことが必要です。
また、記録を残しておくことは、後からトラブルが起こった際に、本人確認・意思確認時の状況を説明するための資料として大事です。
これは、将来の自分の身を守ることにも繋がります。
資料などデータ化できるものは全てデータ化し、書面で取っておいた方がよいものは受託票とともにファイリングしておきましょう。
職務上請求
クライアントから受任した手続を進めるに当たって、戸籍や住民票の取得を依頼されることがあります。
この場合、職務上請求書を使用して取得する場合がありますが、この使用方法については十分な注意が必要です。
本書「3-4-1.懲戒」の事例でも記載いたしますが、職務上請求書不正使用は懲戒事由に当たりますので使用の仕方には気を付けなければなりません。
職務上請求で取得できるのは、「受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合」(戸籍法10条の2第3項、4項)に限られていて、当然ながら無制限に認められるわけではありません。
職務上請求書の具体的な使用方法は平成25年6月日本司法書士連合会発行の「司法書士のための戸籍謄本・住民票の写し等の交付請求の手引き」を参考にするとよいでしょう。
期日・期限の管理
案件のうちでも、期日の決まっている案件や、期限のある案件は特に注意が必要です。
期日を間違えてしまったり、飛ばしてしまったり、期限に間に合わないようなことがあったら大変なことになってしまいます。意識的にしっかり管理しましょう。
オーソドックスな方法ですが、期日や期限のある案件は、すぐにスケジュール帳に書きこむようにしましょう。
ポイントは、「すぐに」書き込むということです。クライアントと電話で話しながらスケジュールを立てることがありますが、取り敢えずメモしておいて、後からスケジュール帳に書きこもうと思っても、電話が何本も続いたりするとあっという間に埋もれて忘れてしまいます。
忙しくなってくるとこのようなことが起こりがちなので、電話しながら書きこむ習慣をつけましょう。
また、未確定の予定にも注意が必要です。確定してからスケジュールに書きこもうと思っていても、やはり、案件が立て込んでくるとすっかり忘れてしまい、後からスケジュールがバッティングしてしまうことや、完全に飛ばしてしまったりする恐れがあります。
未確定の予定でも、(仮)などの印をつけて、書きこんでおくとよいでしょう。