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司法書士の開業について
司法書士はもともと、独立開業するといったことが多い業種ですが、今では独立開業以外にも多様な選択肢ができてきています。
例えば、司法書士法人のパートナーとしてやっていくという選択肢もありますし、大規模な事務所の中で勤務司法書士として活躍していくという道もあります。
また、一般の企業の中で働く企業内司法書士という働き方もあります。
このように、独立開業という道以外にもいろいろな選択肢がある中で、なぜ自分の事務所を開業する必要があるのでしょうか。
開業前にもう一度立ち止まって考えてみよう
一度開業してしまうと、現実的にもう後戻りは難しくなります。
独立開業する前に立ち止まって、何のために独立開業をするのかもう一度考えてみましょう。
一国一城の主という立場に憧れるのか、収入の増加を目指しているのか、経営をしてみたいのか、自分がどこまでできるか試してみたいというチャレンジ精神なのか。
果たして本当に独立開業が自分にとって最善の道なのか、独立開業しなくてももっと自分に合った働き方がないのか、いろいろな角度から検討してみましょう。
それでもやはり独立開業したいという気持ちが強ければ、迷わずその道を進めばよいでしょう。
資格・登録
それでは、開業する場合の司法書士の資格と登録について見てみましょう。
司法書士の資格を有する者は以下のとおりです。(司法書士法4条)
司法書士資格
①司法書士試験に合格した者
②裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官、検察事務官の職務に従事した期間が通算10年以上になる者、又はこれと同等以上の法律に関する知識、実務経験を有する者であって、法務大臣が司法書士業務を行うのに必要な知識及び能力を有すると認めた者
但し、上記に該当する者であっても、以下に掲げる欠格事由に該当する者は、司法書士となる資格を有しません。(司法書士法5条)
欠格事由
① 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることが無くなってから三年を経過しない者
② 未成年者、成年被後見人又は被保佐人
③ 破産者で復権を得ないもの
④ 公務員であって懲戒免職の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
⑤ 業務の禁止の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者
⑥ 懲戒処分により、公認会計士の登録を抹消され、又は土地家屋調査士、弁理士、税理士若しくは行政書士の業務を禁止され、これらの処分の日から三年を経過しない者
そして、司法書士資格を有する者が司法書士となるためには、事務所所在地の司法書士会を経由し、日本司法書士会連合会に登録申請書を提出しなければなりません。(司法書士法8、9条)
日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿には、氏名、生年月日、事務所の所在地、所属する司法書士会等が掲載登録されます。
また、この名簿登載事項に変更が生じた場合は、司法書士会を通じて日本司法書士会連合会に届出をしなければなりません。
登録要件の他、どのような時に司法書士登録が抹消されるかという、登録の取消し事由も、司法書士として業務を行っていく上では重要なことですので覚えておきましょう。(司法書士法15、16条)
必要的取消事由
① 業務を廃止したとき、②死亡したとき、③司法書士となる資格を有しないことが判明したとき、④欠格事由に該当したとき
任意的取消事由
① 引き続き二年以上業務を行わないとき、②身体又は精神の衰弱により業務を行うことができないとき
上記の登録事務と同時に、事務所所在地の司法書士会に入会手続きを取らなければなりません。司法書士会は任意加入の業界団体ではなく、強制加入の団体です。また、司法書士会と異なり強制ではありませんが支部への入会も通例となっています。
日本司法書士会連合会への登録、司法書士会への入会にかかる費用は以下のとおりです。(入会金に関しては各会によって取扱いが異なる場合がありますので、事前に入会する司法書士会に確認してください。)
入会時の費用
・登録免許税 30,000円
・登録手数料 25,000円
・入会金(東京会の場合) 35,000円
・バッチ使用料 6,500円
月額費用
月額会費(東京会の場合) 17,900円
支部会費(支部によって異なる)1,000円~2,000円程度
開業資金
次に、開業に要する資金はどのくらい準備したらよいのか見てみましょう。
開業資金は実際に開業した司法書士に聞いてみると、人によってバラバラです。地域によっても異なりますし、自宅開業か事務所を借りるかによっても違ってきます。
一般的に、東京都内で事務所を借りて開業する場合、100万円~150万円程度の費用が目安になります。
○司法書士登録費用、入会金、月会費等 約30万円程度
○事務所敷金(保証金)、家賃等 約50万円~100万円程度
○機器、備品、事務用品、消耗品等 約20万円程度
また、開業してすぐには、業務の依頼が安定しないことを見越して、仕事がなくても一年くらい生活ができる資金を準備しておくと安心です。
開業資金が自己資金だけでは賄えない場合は、親族からの借入や、日本政策金融公庫の創業融資、保証協会の制度融資などを利用しているケースが多いようです。
開業時に準備するもの
開業時に準備するものは、揃えておかなければ業務に支障が出てしまうものと、できれば揃えておきたいものがあります。
以下に、挙げておきますのでご参照下さい。
揃えなければ業務に支障が出るもの
パソコン、プリンター、ファックス、スキャナー、電話、事務用品(印鑑、朱肉、封筒、筆記具、ホッチキス)、司法書士用備品(権利証表紙、識別情報封筒、目隠しシール)、机、椅子、名刺 など
揃えたいもの
書籍、本棚、金庫、冷蔵庫、電子レンジ、スタンプ、スタンプ台、事務用品(印鑑マット、ファイル、クリップ、付箋、砂消ゴム、カッター、ハサミなど)、計算機、パンフレット、応接セット、観葉植物、絵 など
ベテランには勝てないのか
司法書士登録が終わり、事務所運営に必要なものが準備できたら、いよいよ業務開始です。
まずは、営業をし、新規のクライアントからの依頼を受けていかなければなりません。
さあ、これからだというこの時、多くの新人司法書士が感じる不安があります。
それは、「既に知識も、実務経験も豊富なベテランの先輩方がたくさんいるところで、果たして新人で開業したての自分が太刀打ちできるのであろうか?自分に好んで依頼するクライアントなどいるのだろうか?」という不安です。
私も開業当初は何度も、自分に依頼してくれるクライアントがいるのだろうかという不安を感じたことを覚えています。
しかしながら、今考えてみると、この不安はあまり感じる必要はなかったと思います。
新人でも、自分を求めてくれるクライアントは必ずいるからです。
確かにベテランには、豊富な実務経験と知識、落ち着いた雰囲気による安心感といったような、ベテランならではの良さがあります。このようなベテランの良さを求めているクライアントに対しては、いくら新人が自分の良さを訴えたところで、あまり響くことはないでしょう。
ただ一方で、ベテランの先生方は、敷居が高い、フットワークが重い、融通がきかないといったイメージがあって相談しにくいというクライアントも少なからずいるのです。
そういったクライアントは、むしろベテランではなく、新人の方に好んで相談にくるでしょう。
そのような新人を好んでくれるクライアントに、自分のサービスをしっかりと提供し、満足度を向上させ、リピートしてもらうことが大切です。
もちろん「ベテラン」「新人」といった括りだけではなく、それぞれの司法書士の年齢、性別、キャラクター、執務姿勢、地域などたくさんの要素が複合的に絡み合っています。
いろいろな要素が絡み合って、それが、その司法書士独自のカラーとなってくるのです。
そして、必ず自分のカラーを求めているクライアントがいるのです。そのクライアントに精一杯自分のサービスを提供していけば自ずと道は開けてくるのです。