目次
はじめに
こんにちは、松本光平です。私はYOU司法書士法人の代表を務めています。
この度、私が所属するスタートアップ支援の専門家団体「BAMBOO INCUBATOR」内の有志が主体となり「スタートアップ向けモデル原始定款」を開発公開しましたので、ご紹介いたします。
(以下のバナーリンクからダウンロードできます。)
「専門知識は力なり Expertise is Power.」を合言葉に、誰もが専門知識を活用でき、自己実現の一助とすることができる世界を目指しています。
簡単な自己紹介
当事務所は、商業登記を中心としており、登記業務のうち会社登記が9割を占めています。特に、スタートアップ系の業務を得意としており、種類株式による増資やストックオプションなどの登記や少し複雑な組織再編系の登記も多く取り扱っています。
スタートアップとは、新しいビジネスアイデアや革新的な技術を基に、資金調達をしながら急速な成長を目指す企業のことをいいます。
私の経歴は、学生時代から法律系を志してきたものではなく、異業種からの転身という点に特徴があります。これまでのキャリアでは、多岐にわたる業界で経験を積んできました。
・医療系廃棄物収集・運搬業務の営業職、
・損害保険の営業職、
・スタートアップの総務・経理
など、さまざまな職務を経験しました。
そして、勤務していたスタートアップ企業の倒産を機に司法書士試験の勉強を始めて、司法書士に転向しました。
これらの大小様々な企業、業種での経験は企業法務系の仕事をするうえで非常に役立っています。
スタートアップを支援する理由
スタートアップ企業を支援する理由はたくさんあります。
まず、スタートアップは経済のエンジンであり、新しい雇用を生み出し、地域経済を活性化します。
また、彼らが生み出す技術やサービスは、私たちの日常生活に新しい価値をもたらしてくれます。
生産性が低い、給与が上がらない、老後の生活が不安というような日本の未来を悲観するような状況が散見されますが、日本の未来を明るくしてくれるのは、スタートアップであると信じています。そのようなスタートアップが一つでも多く産まれて成長していくことを望んで日々業務をしています。
ただ、スタートアップが成長していくためには多くのハードルがあります。
スタートアップの内部にいた人間として実感しているのですが、スタートアップには限られたリソースしかありません。資金や人材、時間などが制約される中で、早いスピードで成長していくことは非常に負担がかかることです。
大企業のように多くの部門やスタッフを抱えることができないため、一人一人が多くの役割を担う状況です。かつ、未経験の業務に取り組まなければならないような状況です。そのような事情を理解し、登記業務においても、膨大なタスクを整理し、スピード感をもって取り組む姿勢が求められます。
一般的な中小企業では、定期的な役員変更や本店移転、目的変更の登記などが主なものですが、スタートアップの登記では、一般の中小企業ではまず発行しない、種類株式や新株予約権などの登記が頻繁に発生します。また、登記だけでなく、投資契約書や株主間契約の締結も同時に行うケースが多いためそれらについても気を配る必要があります。
さらに、スタートアップの場合、イグジットとして上場又はM&Aを目指していることから、株主総会の運営などにおいても、法令を遵守した正しい手続きを行う必要があるため、さらに難易度が上がります。
このような事情があるため、われわれのような商業登記に特化した事務所の出番があります。
「スタートアップ向けモデル原始定款」開発の経緯
スタートアップの支援を行っていて実感するのが、起業初期の段階では、サービス開発、営業など膨大なタスクが優先され、登記や事務、バックオフィス系のものが後回しにされているという現状です。
スタートアップのまず第1歩は、会社設立です。
会社設立の登記は、自身でもできますし、無料のサービスを使って設立をすることもできます。ただ、無料の設立サービスやネットの情報では、いわゆる普通の事業を行う法人をターゲットとしているため、スタートアップ特有の事情やスタートアップであれば対策をしておくべき内容に最適化されているものではありません。
そのため、設立後すぐに、定款内容の変更や変更の登記をしなければならないということもあります。
このようなことを無くし、スタートアップがスムーズに法人設立ができるよう、スタートアップのために最適化して開発したのが「スタートアップ向けモデル原始定款」です。
「スタートアップ向けモデル原始定款」の特徴
通常の株式会社では、株主や役員は創業者のみ、株主総会といえば、定時株主総会のみ というケースが多いと認識しています。
一方、スタートアップの特徴は次のとおりです。
・資金調達を頻繁に行う。
・外部株主が入ってくる。
・会社が急速に成長し、外部の役員が入ってくる。
・頻繁に株主総会を開催する。
今回公開しました「スタートアップ向けモデル原始定款」ではこれらの特徴に対応しスムーズな事業運営ができるよう推奨値を設定しています。まずは、無料の設立サービスを使って設立した場合に不具合が起きやすいもの2点を解説いたします。
公告方法
公告方法とは、毎年1回の決算公告のほか、減資や組織再編などある一定の行為をする際に株主や債権者に対して、公示をする方法を定めるものです。
選択肢としては、官報、電子公告又は日刊新聞紙による公告があります。
通常は、まったく意識せず、無料の設立サービスが推奨する電子公告が選択されているケースが多いです。
電子公告のメリットは、次の2点が挙げられます。
①官報の場合、掲載費用が発生するが、電子公告の場合費用が発生しない
②官報の場合、掲載までに申し込みから1週間又は2週間かかるためタイムラグが発生する。
時間と費用を節約したいスタートアップにとっては一見、最適と見えますが、実は電子公告と官報とでは、決算公告に限りますが、掲載する範囲と期間が異なります。
具体的には、官報の場合、貸借対照表の要旨(大会社を除く)ですが、電子公告の場合、貸借対照表の全文の掲載となります。
要旨とは、流動資産 や 固定資産など大きな括りでの数字を掲載すればよいという意味です。
全文とは、流動資産をさらに区分した、現金及び預金 売掛金 未払金 といったより具体的数字を掲載する必要があることを意味します。
また、期間については、官報の場合紙面は1日販売されるのみ(その後インターネット官報により1ヶ月間閲覧可能)ですが、電子公告の場合、5年間継続して開示が必要となります。
つまり、電子公告ですと、詳細な決算内容が5年間にもわたって開示されることとなってしまいます。
これは、新規性のあるビジネスを展開するスタートアップにとっては、決算内容が詳細に長期間にわたり公開されるのは、ライバル企業に分析される可能性も高まり、好ましくない可能性があります。
この点を考慮して、モデル定款では、あえて官報を推奨しています。
発行可能株式総数と設立時の発行株式数
スタートアップが急速な成長を目指すということは、事業の進展にともない、株価が急速に高くなることを意味しています。設立時に発行する株式数は任意であることから、例えば 資本金100万円に対して20株発行(1株5万円)とすることは何ら問題ありません。
ただ、すぐに株価が10倍(50万円)100倍(500万円)となると、資金調達や新株予約権発行の際に、割当が難しくなり、株式分割が必要となってしまいます。
そのようなことを考慮し、モデル定款では、1株1円での発行を推奨しています。
もちろん、この場合でもどこかのタイミングで株式分割は必要となりますが、少なくとも設立すぐに、株式分割が必要という事態にはなりません。
それに合わせて、発行可能株式総数についても、1億株と設定しています。
以上2点について解説をしました。
まだまだ工夫した箇所は多数ありますが、別の機会にご説明をさせていただきます。
最後に
YOU司法書士法人の理念とビジョン
私たちの理念は「今より豊かに安心して暮らせる社会を創る」ことです。
これは、スタートアップが持つ夢や目標を実現するためのパートナーとして、質の高いリーガルサービスを提供し続けることを意味します。
ビジョンとしては、「1人1人の個性が認められ、挑戦が許容される社会の実現」を掲げています。スタートアップは、起業家の情熱と創造力によって成り立っています。私たちは、その情熱と創造力を最大限に引き出し、ビジネスの成功をサポートすることを目指しています。
私たちYOU司法書士法人は、スタートアップが直面する多くの課題を共に乗り越え、彼らの成功を後押しすることで、より豊かで安心して暮らせる社会の実現を目指しています。
スタートアップ支援を通じて、私たちも成長し、社会全体に貢献していきたいと考えています。
司法書士法人としても成長していきます。供に成長を目指してくれる仲間も募集しております。ご興味があればお問い合わせください。