前々回、前回に続き、どうすれば求職者が適切な事務所に就職できるのか、最終回のコラムでは特に「司法書士事務所のチェックポイント(どんな司法書士事務所に就職すればよいか?)」と「どこで求人中の事務所を探せばよいか?」についてお話しします。
目次
司法書士事務所のチェックポイント(どんな事務所に就職すればよいか?)
個人事務所か法人事務所か
私は、個人事務所と法人事務所との間に大差はないと考えています。
一般的によく聞く違いは次のようなものです。
•取扱業務については、法人事務所は登記専門・相続専門・債務整理専門が多く、個人事務所は色々やっていると昔は聞きましたが、今でもそうだとは思いません。事務所によると思います。
•仕事の流れも、法人は流れ作業・分業制が多く業務の一部しか担当させてもらえないイメージで、個人事務所は最初から最後まで一人で担当できるイメージと、昔は聞きましたが、今でもそうだとは思いません。事務所によると思います。
•複数拠点がある法人事務所は転勤の可能性がありますが、入所時に「転勤なし」としっかり合意書を作成しておけば、拠点が廃止される場合以外は大丈夫でしょう。
•給与水準は、法人・個人関係なく、個々の事務所によります。
•社会保険の有無については、法人事務所は必ず入っていますし、個人事務所でも任意加入されている事務所もあります。
皆さんは、個人事務所、法人事務所とも、中身をよく見て就職活動をすることをお薦めします。
ただし、法人の社員司法書士(役員である司法書士)になるのは、リスクを伴う全く別の話ですので、この点についてはコラム「司法書士法人設立や、司法書士法人への合流は立ち止まってよく考えよう」もご参照ください。
良い司法書士事務所の見分け方
人によって良い事務所の概念は異なると思いますが、一般的には次のように情報収集して見分ければよいと思います。
就職したいと思った事務所のHPをご覧ください。
司法書士会での講演実績が多数あれば、少なくとも同業者からは凄いと思われている事務所でしょう。
また、配属研修受け入れ事務所であれば一応司法書士会が問題ないと考えている事務所でしょう。
次に、勉強会などを積極的に行なっている事務所であれば、業務を進化させようという意欲ある事務所だと考えられます。外部の研修への出席も認めてくれるでしょう。
HPには色々やっていると書いてあるのに、面接に行くと登記しかやっていない事務所だったということが多いそうです。
次のように見分けられるのではないかと思います。
1.訴訟業務を勉強したいのであれば、その事務所のスタッフ紹介ページをご覧ください。
事務員の写真を堂々と掲載しているような事務所は、まず訴訟業務はやっていないでしょう。
訴訟業務には、ある程度のリスクもあるため、スタッフの顔をネット上に晒すべきではないからです。
弁護士事務所などでも、弁護士本職の写真を(集客・営業上の理由からか)掲載している事務所は多いですが、事務員の写真までを掲載している事務所はほとんどありません。
また、訴訟業務を行なう事務所の名刺には、通常、司法書士の携帯電話番号は記載しません。
事件の相手方に名刺を渡した際、携帯を知られ電話されると面倒だからです。
2.企業法務・事業承継を勉強したいのであれば、HPに企業との顧問契約をうたっている事務所であれば、おそらく企業法務や事業承継も行なっているでしょう。
これらは顧問契約の肝となる業務だからです。また、顧問契約を行なう事務所の名刺にも、通常、司法書士の携帯電話番号は記載しません。
顧問先にのみ携帯電話番号をお伝えし、休日相談にも応じるというプレミアをつけるためです。
SNSでは、所長の普段の発言から、人柄を見ることができるでしょう。
これらの場では緊張すると思いますが、求職者も就職して良い事務所なのかを見分ける必要があります。
次のような点に注意して見ると良いでしょう。
1. 普段の事務所の雰囲気は、事務所見学で事務所を訪問した際に所員が萎縮しているか、生き生き笑顔で働いているか、笑顔で大きな声で挨拶してくれるかなどで見分けます。
2. 所長の人柄は、裏表なさそうか?目をしっかりと見て、後ろめたそうな目をしていないか見分けましょう。
3. 勤務しながら新人研修・特別研修・会員研修に行けるかどうかは、所員に「直近に参加した研修で面白かったもの」を言ってもらえば分かるでしょう。
①通常の事務所であれば、所員のレベルアップは、事務所のレベルアップにもつながりますので、行かせてもらえます。
優良な民間企業においても研修開発は常に行っています。研修に行かせないような事務所は、時代に取り残されていくことになるでしょう。
②まれに「司法書士会の研修はレベルが低い」などと研修に出席しない言い訳をする司法書士がいますが、あり得ません。
司法書士業務の範囲は本当に幅広いため、到底一人の司法書士が全分野で全ての知識を持っていることはあり得ないからです。
業務分野が余程偏っているか、知的好奇心(向上心)が不足していることが明らかですので、このような事務所には就職しない方が良いと断言できます。
4.本棚も見せてもらいましょう。
本棚には、その事務所の特徴が明確に現れます。不動産・商業・成年後見・相続・訴訟など蔵書バラエティ豊かな事務所は、実際の取扱い業務もバラエティに富んでいます。
また、あなたが取り扱いたい業務のオススメ書籍を所長に聞いてみるのも良いかもしれません。
これら以外にも色々な「見分け方」があるかもしれません。
面接は、事務所が「あなたを面接する場」であるとともに、あなたが「事務所を面接する場」でもあります。
十分な質問を準備して臨みましょう。
どこで求人中の事務所を探せばよいか?!
求人事務所が「かつて」頼っていた媒体
求人事務所が頼りにしている求人方法(求人チャンネル)は次のとおりです。
コスト大(100~300万円/人)
・転職エージェントを使う
・資格試験予備校などの紹介予定派遣
コスト中(数万円~数十万円)
・ダイレクトリクルーティングサービス(スカウトメールなどの発信)
・リクルート・インディードなどへの掲載
・資格試験予備校などが主催する合同説明会への参加
コスト無
・ハローワークへの事業所登録
・司法書士会によっては用意されている求人サイトへの登録
・司法書士会が備え置いている求職者履歴書の閲覧
・友人からの紹介
・Facebook · TwitterなどのSNSでの情報発信
これだけコストが違うと、求人事務所側も当然求人のチャンネルを使い分けます。
ブランディングに優れている事務所は「コスト無」の自社HPやSNSだけで求人している事務所もあるでしょう。
通常の事務所であれば「コスト中」の有料サイトへの掲載も検討するかもしれません。
それでも、余程人不足に陥らなければ「コスト高」のエージェントなどには中々手を出さない(手を出せない)事務所がほとんどです。
転職エージェントや紹介予定派遣まで使って求人している事務所は、急に人が辞めた(定着しない)か、事務所が急拡大しているかぐらいしか考えられません。
経営司法書士からすると、エージェントに依頼したときに、同業他社から「人が定着しない事務所か、儲かっている事務所か」とレッテルを張られ陰口を言われるのではないかというのが怖いというのもエージェントを使わない理由かもしれません。
当事務所でも「コスト無」から始めて「コスト中」まで。エージェントは最後の最後と決めています。
エージェントを使っていない事務所も多くあるのです。
したがって、求職者は、エージェントに頼らず、ご自身で求人事務所を探し出す苦労を厭わないことが大切です。
ご自身で求人事務所を探される際には、
1. 司法書士会に履歴書を郵送する。
2. インターネットでハローワーク・Indeedなどを検索する。
3. 司法書士会によっては用意されている求人サイトなどを検索する。
各司法書士会に求人サイトが必ずあるとは限りません。日本には全部で50の単位会がありますが、うち求人サイトがあるのは10単位会だけ(青森、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、大分、沖縄)です。
4.インターネットで各事務所のHPを閲覧し求人していないか検索する。
などがオススメ・・・でした。「かつて」は。
↓
求人事務所が「今後」頼る媒体
先ほどもお話ししたように当事務所でも、数年間、新人司法書士のリクルートに真剣に取り組んできました。主に取り組んできたのは「コスト無」の媒体です。
ところが、よく考えると「コスト無」媒体には「必要なときにすぐに求人できない」という大きな弱点があり、なおかつ「コスト無」とは言い切れないことがわかりました。
食事会、求人専用リーフレット作成、印刷、配布、友人知人司法書士への声掛けなどなど、結局出費はしているし、食事会や求人方法を考えるために時間も結構使い、無駄をしていました。
そんなとき私に「求人をしている司法書士事務所と求職者をつなぐ“新しいプラットフォーム”を作りたい。その顧問となってアドバイスをして欲しい。」と声が掛かったのです。
まさに渡りに船と快諾しました。
それが「司法書士業界専門の求人・求職のプラットフォーム『司法書士JOBサーチ』」です。
「司法書士JOBサーチ」は、私が既存媒体に対して持っていた不満をすべて解消するべくアドバイスし、ほぼ全ての不満を解消することができました。
求人事務所側の不満をほぼ全て解消しましたので、今後は、司法書士業界の求人・求職・転職はすべて同サービスを通じて、行われることになると思います。
求人している事務所は、都心部に集中しています。通勤の無駄を省ける地元で就職したい方も多いとは思いますが、良い事務所に入ろうと思えば、地域を広げて探す必要もあるでしょう。
短期合格者又は若年者の場合
このカテゴリーの方は安心です。よほど変わった方以外は「司法書士JOBサーチ」で良い事務所を見つけることができるでしょう。
なお、若年者が何歳までを指すのかは事務所によって異なりますが、当事務所の場合にはおおむね30代前半です。
上記以外の方の場合
「司法書士JOBサーチ」で探して応募をしても、なかなか採用してもらえないのであれば、エージェントに一度依頼して、ご自身の魅力を上げてもらってから、多くの人を採用している事務所に求職するのも良いと思います。
結びにかえて
良い事務所に就職いただき、司法書士の仕事と業界を大好きになってください。
そうすれば、より良いサービスを市民・法人に提供できると思います。
このコラムの読者が良い事務所に就職できることを、そのために司法書士JOBサーチがお役に立てることを心より祈念しつつ結びにかえたいと思います。
長文にもかかわらず、最後まで拝読いただき、ありがとうございました。