当事務所は、特に信託が主力の事務所というわけではありません。
鳥取は司法書士の数も少なく、信託に関して情報を得る機会は限られていました。
従って、私は、誰と情報交換をするわけでもなく、独自に信託の勉強を続けていました。
そうした中、時折、自宅や賃貸アパートなどに関して、民事信託の手法を用いた提案をすることがありました。
縁があって声をかけてもらい、日司連の信託の委員会などにも所属させていただくことになりました。
当時は、各地の司法書士会で研修会を行っても、ほとんどの受講者が、民事信託のことを知りませんでした。
ベテランの先生方の中では、詐害的な手法として信託が使われるという印象が強く、警戒心をもって受け止められたことも多くあります。
その状況が徐々に変わってきたのは、平成28年~平成29年かと思われます。
この頃から、テレビや雑誌などでも、認知症対策や死後の承継対策として、民事信託が取り扱われるようになってきました。
ある信託銀行では、信託口口座の開設が平成29年から伸びてきています。
この頃が、民事信託の普及期であると捉えられています。
民事信託が普及した背景には、「成年後見制度よりも優れている」「揉め事が起こらない新しいツール」などという謳い文句で、民事信託のメリットが強調されたこともありました。
民事信託は夢のツールである、と語られた時代です。
しかしながら、民事信託の盛り上がりと同時に、特に学術界からは、民事信託に対する懸念の声が強く上がるようになりました。
「信託法の理念からかけ離れているのではないか」「成年後見制度より優れているという誤解を広げているのではないか」「遺留分などの潜脱のために誤ったアピールがされているのではないか」などという批判です。
平成30年頃は、様々な信託法の学者や弁護士が、民事信託に対する警鐘の声を揃ってあげるようになった、と言えるでしょう。
折しも、東京地裁平成30年9月12日判決など、民事信託の一部を公序良俗により無効とするという判決も出された頃でした。
当時も今も、民事信託の担い手として一番の実績を挙げている士業は、司法書士です。
民事信託に対する批判は、ストレートに、司法書士に対する批判でもありました。
この頃、私は、危機感を強く持っていました。
このままでは、民事信託は潰されてしまうかもしれない…
あるいは、司法書士業界も潰されてしまうかもしれない…
私は、仲間と夜な夜なLINEを続け、どのようにすれば、民事信託に関する適正な情報を届けることができるのかを議論し続けました。
その結果、既存の組織とは別に、独自の組織を立ち上げて情報発信を行うしかないのではないか、という結論に達したのです。
そこで、私を含めた司法書士の4人で、信託の学校を立ち上げることを選びました。
信託の学校は、オンラインによる学びの場です。
なぜ、オンラインの方式を選んだのでしょうか。
私は、民事信託に関する書籍や雑誌の記事なども執筆したことがあります。
しかし、民事信託は、まだまだ発展途上の業務です。
私が共著で単行本を執筆した平成28年頃などは、まだまだ実務を行っている人も少ない状態でした。
常に議論を重ねながら、最善の実務とは何か、試行錯誤を重ねていたのです。
原稿を書き上げて、ゲラになって校閲する段階で、既に、自分が書いたこととは考え方が変わっていることも、多くありました。
さらに、出版される頃には、まったく考えが変わってしまっています。
民事信託に関する知見は変化が激しかったので、本を出版した途端に情報が古くなってしまうのです。
そこで、常に情報のアップデートが可能な、オンラインによる方式によるしかないのではないか、と考えたのです。
さらに、コロナ禍の前では、Zoomなどのオンラインツールを使った勉強会もほとんどなされなかったため、勉強会の機会が都市部に偏っていました。
特に、鳥取にいる私としては、情報交換の機会が極めて限られていることに、問題意識を持っていました。
全国的に教育の機会を持つためには、オンラインのツールを使うことが不可欠ではないかと考えたのです。
このように、徐々に、信託の学校の構想が形になっていったのです。
信託の学校では、初心者向けの公開セミナーを、4月9日(土)、4月16日(土)、4月23日(土)の3回に分けて行います。
各1時間の講義で合計3時間となります。
連続で3回受講していただくことをオススメしますが、1回のみの参加でも可能ですので、お気軽にご参加をお待ちしております。
申込は下記からお願いします。
https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=jupNcCrhWUeUO5KQ0suyFkmw9oly4DVItldKCdaeCTZUM01WNUhESTlCWU1TOVNCNVhCWE9BSldURS4u