司法書士の永田翔(ナガタショウ)と申します。
ブログおよびTwitter上ではショウ先生というハンドルネームで活動しております。
私は司法書士のほかに、土地家屋調査士と行政書士の資格を持っています(宅地建物取引士資格も有り)。
資格を2つ持っていることをダブルライセンスと言ったりしますので、3つ持っている私はトリプルライセンスということですね。
ちなみに私の最終学歴は中卒ですが、保有資格と学歴のギャップで、良い意味で驚いていただけることが多いです(高校を1年生の3学期に自主退学)。
今回はコラム執筆の機会をいただきましたので、次の二つについて書きます。
1. トリプルライセンスのメリット・デメリット
2. 中卒の私がいかにしてトリプルライセンスを取得したか
目次
トリプルライセンスのメリット・デメリット
トリプルライセンスの良いところ
良いところは、ありきたりですが、登記関係の業務をワンストップで受任できることですね。
どのような流れで手続きを進めるか、総合的に判断ができます。また一つの案件からの売上を大きくしやすいです。
依頼者の方にとっても、手続きに関してやり取りをする相手が減るというメリットがあるはずです。
特に建売業者さんの案件や、分筆が絡む交換・時効取得などのご相談を受けた際は、「土地家屋調査士の資格も持っていてよかったな」と実感します。
また「不動産登記に詳しい」ということを、「複数の資格」というわかりやすい形で印象付けることができますね。
トリプルライセンスの悪いところ
登録すると毎月の会費が資格の数だけかかるので、少し懐に痛いです(笑)。
神奈川県の場合、司法書士会・行政書士会・土地家屋調査士会の月会費の合計は4万円を超えていたと思います(司法書士会費が一番高く、調査士会費はそれより少し安いです。行政書士会の会費はもっと安いです)。
ただ資格が増えると選択肢が増えるわけですから、会費の支払い以外でデメリットを感じたことはありません(そもそも支払う会費以上のメリットを感じなければ、登録しなければいいだけですね)。
ただ、せっかくの資格を充分に活用できないということはあり得ます。
例えば、私の場合は司法書士業務がメインです。表示登記の一通りの知識はあっても、測量の技術がありません。
なお、当事務所には実務経験豊富な測量士がおりますので、事務所としては安心して業務をおまかせいただける体制にはなっていますが、自分1人でやっていると資格を充分に活かしきれないかもしれません。
複数資格があっても充分に活かせなければ、時間やエネルギーを使って資格を取得しても、さほど意味はありません。
専門性を高めるために複数の資格を取るのも一つの選択肢ですが、それ以外の方法であっても、何かご自身の得意分野を見つけられると良いでしょう。
例えば司法書士業務だけをとっても、相続専門・信託専門・債務整理専門など、何かに特化していれば、その分野について同業者よりも詳しくなるはずです。
ただ私の場合は「トリプルライセンスを活かした、複雑な不動産手続きの処理を得意にしている」と自負しておりますので、複数の資格を取って良かったと思っています。
トリプルライセンスならではの実務
具体例の一つとして、建売業者さんの案件の流れについて書いてみます。
建売業者さんが仕入れてから販売するまでの間には、「登記」と呼ばれる手続きだけでもこれだけあります。
1.土地仕入れ時の決済
2.多棟現場であれば分筆・古家付きであれば滅失
3.表題登記
4.エンドのお客様への売却の決済
実務をされている方であれば、よくご存知だと思いますが、1と4は司法書士業務で、2と3は土地家屋調査士業務ですね。
これを建売業者さんの目線で考えると、司法書士からもらった書類を調査士に送ったり、逆に調査士からもらった書類を司法書士に送ったり、けっこうな手間が発生しているはずです。
当事務所の場合は、仕入れ決済の場で、境界確認に関する資料もお預かりすることが多いです。
決済が終われば、すぐに分筆登記ができるように準備を進めていくわけです。
建物が完成した後は、表題登記の資料(建築確認など)をお預かりします。
その際も、販売時の決済についての見積や準備まで、一連の流れで進めることができます。
なお仕入れる土地が農地であれば、さらに届出・許可については行政書士に依頼することになりますが、私は行政書士の資格も持っております。
もちろん必ずしも1人で複数の資格を取る必要はなく、合同事務所のような形でパートナーとなる方を見つけることができれば、同じようにワンストップで対応できると思います(私のかつての勤務先がそのような形でした)。
今年ご依頼いただいた案件では、農地法の届出と許可・交換・贈与が絡む地主さんの案件で、報酬額が100万円を超えるものもありました。
もちろんそれだけ複雑で作業量も多かったのですが、依頼者・紹介者から「他の先生には難しかったと思う」と感謝の言葉をいただき、充分な報酬も受け取れることは嬉しい限りです。
中卒の私がいかにしてトリプルライセンスを取得したか
高校中退から資格試験受験に至るまで
高校1年生の3学期に自主退学した後、恥ずかしながら今でいうニートのような生活をしていました。
高認(高校を卒業していなくても、大学受験ができる資格。私が取得した当時は「大検」と呼ばれていました)の資格は持っていますが、大学受験をしたこともありません。
そんな私が紆余曲折を経て、22歳の頃に司法書士試験の受験勉強を始めました。
それまで学歴・職歴なしでしたから、「この年から優良企業に就職することは難しいだろう。何か資格を取るか、起業することにしよう。」と考えたのです。
「3年間資格試験の受験をして、ダメだったら起業しよう」と決めました(私はギリギリ3度目の受験で司法書士試験に合格しています)。
※どのようなビジネスで起業するつもりだったかは、後で余談程度に書きます。
受験する資格を選ぶにあたっては、
1. 学歴・職歴など、受験にあたっての条件がないこと(中卒ですからね)
2. 取得すれば独立して収入を得られる見込みがあること
3. 自分が興味を持てること
この3つを重視しました。
ドラマ・漫画「ミナミの帝王」などで見た法律の話が面白かったこと。
また当時は投資に興味を持っており、不動産や株式に関する法律にも興味がありました。
トリプルライセンスを目指した理由
行政書士試験は司法書士試験よりも先に取得していたので、土地家屋調査士試験を受験しようとした理由について書きます。理由は二つあります。
一つは地元三重県伊賀市での配属研修でお世話になった、奥俊次先生の影響です。
奥先生も、司法書士・行政書士・土地家屋調査士の資格をお持ちでした。
奥先生は不動産登記の実務に極めて精通されており、実務家として心から尊敬しています。
配属研修中に「都会では調査士資格まで要らんかもしれんけど、田舎で司法書士をやるなら取っといた方がええ」と、おっしゃっていたことをよく覚えています。
私は東京・神奈川で勤務しており、田舎(地元)で開業の予定はほぼなくなっていましたが、実務家として、奥先生への憧れが残っていました。
もう一つは単純に、司法書士実務をしていると、表示登記に関するご質問・ご相談もよくいただくということです。
「表示登記に関しても、よくある質問に答えられる程度には勉強したい。ただどうせ勉強するなら、せっかくだから資格を取ることにするか。」と考えました。
なお司法書士・行政書士は専業受験生として臨みましたが、土地家屋調査士(と宅地建物取引士)は勤務司法書士として働きながらの受験勉強でした。
具体的な勉強方法などは、ここでは割愛します。
ご興味があれば、私のブログを読んでいただけると嬉しいです。
締めくくりに
司法書士の資格を取って、私の人生は大きく変わりました。
実は妻と出会ったのも、勤務司法書士時代の出張先なのです(週一のペースで新幹線を使って地方に出張する案件を担当していました)。
もし3度目の受験でも不合格であれば、輸入販売・PC・プログラミング・ゲーム関係の何かで起業していたと思います。
輸入販売やゲーム関係では実際に収入を得ていた時期があり、今でも「これから先の人生でやる機会を作るかも」と考えることがあります。
資格は選択肢を増やす方法であって、それに縛られる必要はありません。
「司法書士の資格を取ったら、それに関する仕事しかしてはいけない。」というわけではないのです。
おっと、司法書士JOBサーチさんの趣旨からは外れてしまいますかね(笑)?
すでに資格をお持ちの方も、勉強中の方も、資格に縛られず、より良い人生が送れることを願っております。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
もしかすると輸出入で生計を立てていたかもしれない、士業トリプルライセンスの永田翔でした(笑)。