お世話になっております。神戸で土地家屋調査士事務所を営んでおります西村と申します。
半年前に 前編として「表題登記の種類と必要書類(建物編)」 でコラムを載せさせて頂きました。
もっと早くに後編を書くつもりでいたのですが、あれよあれよでもう半年経ってしまいました。
では、後編の「表題登記の種類と必要書類(土地編)」をご覧ください。
目次
土地地目変更登記・・土地の地目が変わったら変更登記をします。
① 土地家屋調査士への委任状(申請人の署名捺印(認印)。共有の場合でも1名からできる。)
地目が変更されているか現地調査は必要ですが、基本的にはこれだけです。
公衆用道路なら道路工事が完了してから、宅地なら建物が建ってから、許可申請などは場合によっては宅地として使用する条件が整った時点での申請になります。
ただし、農地の場合は農地転用許可証が必要になります。農地転用許可を代理で申請できるのは行政書士になりますので、許可がおりてからの申請になります。
農地転用はどこの地域でも簡単に許可が下りるわけではないので注意が必要です。
変更する土地が共有の場合でも、報告的登記ですので1名から申請できます。
土地合筆登記・・複数の土地を一つにしたい場合は合筆登記をします。
複数の土地をくっつけたい場合は合筆登記をします。土地家屋調査士の業務の中で唯一現地調査が不要です。
ただ、合筆制限があり、①合筆したい土地が接していること ②同じ市町村字 ③同じ地目④同じ所有者 ⑤同じ権利以外の登記※の場合に限ります。
合筆する土地が共有の場合は令和5年4月1日に民法改正があり共有者全員からではなく、持分の過半数からのご依頼でできるようになりました。
※同じ権利以外の登記とは、「登記の目的」「申請の受付の年月日」「受付番号及びその日付」が同一のものです。
① 土地家屋調査士への委任状(署名捺印(実印)。共有の場合は持分の過半数が必要)
② 印鑑証明書(3か月以内のもの。)
③ 登記済証又は登記識別情報
もし登記済証や登記識別情報を紛失している場合は、土地家屋調査士が本人確認を行い、本人確認情報を作成します。
合筆登記をすることにより新しい登記識別情報が発行されます。
土地家屋調査士が申請できる唯一の権利登記といわれています。
境界確定・・地積更正登記や分筆登記をする前提として必要です。
地積更正登記や分筆登記をするには前提として申請土地に接している土地全ての境界が確定している必要があります。また、登記まではしなくても銀行から融資を受ける条件として境界確定をして実測の面積が最低限必要な場合も多いです。
境界確定に関しては土地家屋調査士の本領発揮といいますか個人差が非常に大きいです。建物の登記は誰がしてもほとんど差はありませんが、土地に関しては隣接所有者に立会をしてもらって、筆界確認書等に承諾の捺印を貰えるかどうか、対応や会話次第で決裂する場合もあります。そうなってしまっては全てが頓挫してしまうので責任重大です。
隣接所有者にとっては、自分が長年思い込んでいた境界線と一致しない、依頼者との不仲、自分には関係ないなど、いろんな考え方の人がいますので、どう説得するかここが一番難しいところでもあります。
なかにはいつ行っても留守で会ってもらう為に家の前で張り込むこともあります。同じような場合で空き家になっており隣接所有者が行方不明でどうしても居場所が突き止められない場合、近所のお宅に聞き込みしたりもします。
それでも見つからないときは隣接所有者が行方不明でも、境界の承諾に難を示しても、関係なく筆界を決めてくれる筆界特定制度を使うという方法もあります。詳しくは後ほど説明させて頂きます。
必要書類については多岐にわたるので割愛させて頂きます。
地図訂正申出・・公図と申請地の隣接関係などが一致しないときは地図訂正の必要があります。
地積更正登記や分筆登記をするには前提として申請土地に接している土地全ての公図の隣接関係が一致している必要があります。一致していない場合には地図訂正の申出を申請して公図を訂正する必要があります。
それには根拠も必要ですし隣接土地の同意(署名捺印)も必要になります。
同意をもらう土地の範囲については登記官に相談しなければなりません。申請地と隣接地それから影響の出そうな範囲で同意を貰う必要があります。
ですので見積の段階で数を断定することは難しいかと思います。
① 土地家屋調査士への委任状(申請人の署名捺印(認印)。共有の場合でも1名からできる。)
② 地図訂正同意書一式
土地地積更正登記・・登記地積と実測地積が異なる場合更正します。
前提として申請する土地に接している筆界がすべて確定されている必要があります。
更正する土地が共有の場合でも、報告的登記ですので1名から申請できます。
① 土地家屋調査士への委任状(申請人の署名捺印(認印)。共有の場合でも1名からできる。)
② 境界確定書類一式
境界確定書類が揃っていれば後は申請するだけです。ただ、他の土地家屋調査士や測量士が作った書類は点検測量を行う必要があります。点検して問題なければ申請できます。
土地分筆登記・・土地を分けたい場合は分筆登記をします。
前提として申請する土地に接している筆界がすべて確定されている必要があります。
基本的な必要書類は地積更正登記と同じです。一申請で地積更正分筆登記もできます。
分筆線は依頼者と相談して好きに決めることができます。
分筆する土地が共有の場合は令和5年4月1日に民法改正があり共有者全員からではなく、持分の過半数のご依頼でできるようになりました。
① 土地家屋調査士への委任状(申請人の署名捺印(認印)。共有の場合は持分の過半数が必要)
② 境界確定書類一式
分筆点を現地で設置する必要があります。境界確定書類が揃っていれば後は申請するだけです。
ただ、他の土地家屋調査士や測量士が作った書類は点検測量を行う必要があります。点検して問題なければ申請できます。
筆界特定制度・・境界確定ができない場合に解決します。
筆界特定制度とは、土地の所有者の申請に基づいて、筆界特定登記官が、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。
筆界特定とは、新たに筆界を決めることではなく、過去に定められたもともとの筆界を明らかにすることです。特定された筆界は、公的機関が判断を示した筆界となり、土地の筆界の位置が問題となったときなどに、筆界の位置を示す証拠としての力をもちます。
つまり隣接所有者が行方不明でも、境界の承諾に難を示しても、筆界が特定されれば地積更正登記や分筆登記ができるようになります。
まさに無敵ともいえる筆界特定ですが申請してから特定されるまでに約半年から1年前後かかってしまいます。土地家屋調査士が代理人で申請するので当然費用も追加でかかりますし、法務局に支払う手数料もかかります。
基本的に原始筆界を明らかにするために古い申告図などを基に特定する事もあり、とんでもないところに特定される場合もありますので解決はしますが諸刃の剣でもあります。
そして筆界特定で特定した境界点については、相手方の許可があれば境界標を設置することができます。
筆界特定が完了した場合は登記事項証明書の上から二行目あたりにその旨が記録されてしまいます。
相手方は筆界特定の結果に不服がある場合は筆界確定訴訟をすることができますが結果が変わることはまずないそうです。
① 土地家屋調査士への委任状(申請人の署名捺印(認印)。共有の場合でも1名からできる。)
② 固定資産評価証明書
民間紛争解決手続代理(土地家屋調査士会ADR)
まだ実用的ではないようですので今回は割愛させて頂きます。
表題登記に関する土地家屋調査士の分野と必要書類の知識(土地編)は以上になります。
皆様いかがでしたでしょうか。決して読み物としては面白くないコラムになってしまいましたが、司法書士の先生方が土地家屋調査士に相談する前に大体こういうことをしてるんだと認識して頂けたなら幸いです。