ごあいさつ
東京都新宿区西新宿にて司法書士をしております佐藤良基(さとうりょうき)と申します。
司法書士JOBサーチへの寄稿は今回で二度目となります。
前回のコラムでは業界の常識にとらわれすぎない、“紹介を中心とした事務所づくり”についてお伝えしました。
今回のコラムでは当事務所の主要業務となっております「法人設立業務」についてお伝えいたします。
法人設立業務はもはや他士業や民間業者を巻き込んだ激戦業務となっていることについては周知のとおりかと思います。それでも法人設立業務は司法書士が決して手放してはならない業務のひとつです。理由はいうまでもなく「登記」が必要になるからです。
報酬相場が下がっていることや、業務獲得の方法がわからず手を出さない同職がいることを耳にして驚くとともに大きな危機感を覚え、本コラム『法人設立業務のススメ』を執筆するに至りました。
ひとりでも多くの同職が選択肢のひとつとして法人設立業務をメイン業務として選択し、活躍していただきたいと願っています。
他士業との相性が良い
前回のコラムで“紹介を中心とした事務所づくり”を意識していることをお伝えしました。
法人設立業務は他士業との相性が良いことも特徴のひとつです。
私の場合は主に税理士、行政書士からの紹介がメインとなります。
税理士の場合は個人事業主の法人成りや、既存顧問先の2社目・3社目の会社設立。
行政書士の場合は許認可絡みの会社設立や医療法人の設立が多いです。
「定款認証は行政書士、登記は司法書士」という会社設立でも当事務所ではお引き受けしています。
設立後の定款変更や役員変更などの際にもご紹介いただくことが多いからです。
許認可を中心にやられている行政書士の先生とは非常に相性がいいと思いますので、積極的に交流されることをオススメいたします。
法人設立業務の現状
法人設立業務は昨今、報酬相場が落ちてきています。理由は、司法書士に依頼せずに登記ができるサービスが拡充してきたことや、薄利多売で受任する一部士業の存在があるかと思います。
それらのサービスに対抗することはオススメしません、間違いなく疲弊します。
特に安さを売りにしてしまうと質の悪い客層を引き寄せてしまい、クレームや懲戒処分のリスクなども増大します。
司法書士の仕事をいくら安く受けたとしても、責任の重さまで価格に比例して軽くなるものではありません。
受任件数を増やすということは責任の重さも比例して重くなり積み重なっていくということを忘れてはいけません。
「安くやれ、早くやれ」という無理難題を押し付ける見込み客が目の前に現れたときは民間業者のウェブサイトのリンクだけを教えてあげればいいでしょう。
「AIで登記の仕事がなくなる」と叫ばれ続けてもう10年以上は経つでしょうか。なぜか嬉々として叫び続ける同業者も少なくないですが、みなさん登記実務をやっていない方が叫んでいるように私からはお見受けします。
日々登記実務に邁進している方でそのようなことをおっしゃっている方は見たことがありません。
これから司法書士業界に入る方で将来性に不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、自分しだいで何とでもなる業界だと私は思います。
事務所経営の安定化につながる
法人設立業務は事務所経営の安定化につながります。法人を設立する際に登記が発生するだけでなく、その後の定款変更や役員変更でも登記が発生するからです。
自宅を本店として株式会社を設立する(設立登記)
事業が軌道に乗ってきたのでオフィスを借りる(本店移転)
役員を追加する(役員変更)
出資をしてもらうことになる(増資、場合によって種類株式の発行)
事業を拡大する(目的変更)
ストックオプションを発行する(新株予約権)
子会社を設立する(設立登記)
子会社を吸収合併する(吸収合併)
減資をする(減資)
会社を畳む(解散・清算)
と、会社が誕生してから清算するまで、これだけの登記が発生する可能性があります。
ひとつの会社からこれだけの登記が発生する。これが2社、3社、10社、100社・・・。
と積み重ねていけばどうなるでしょうか。
商業登記を専門でやっている事務所がどうして安定的に経営できるのか、そのカラクリが少しだけ理解していただけたのではないでしょうか。
だからこそ、一番はじめの法人設立にこだわる必要があるのです。
法人設立勉強会
法人設立業務が司法書士事務所を経営するうえで非常に重要であることがご理解いただけたのではないかと思います。それでも合格したばかりの方や、開業したばかりで経験も少ない方は不安も大きいでしょう。
そのような経験の浅い司法書士を対象に、法人設立業務の勉強会を開催することにいたしました。
勉強会の情報につきましては随時私のツイッター(X)にて発信していきます。
「0から1」の部分について私がみなさまの背中を押します。その結果、法人設立だけでなく商業登記を得意とした司法書士が少しずつ増えていき、劣悪なサービスを利用して泣きを見る起業家や経営者がひとりでも少なくなるような未来になることを願っています。