はじめに
「AIは気になる。でもどう使って良いか分からない。」
「検索やちょっとした相談には使っているけど、果たしてこれでよいのだろうか。」
最近、司法書士業界でも「AI」という言葉を聞かない日がないくらいの状況になってきました。そんな中、自分はAIの波に乗り遅れてしまっていると感じている先生方も少なくないかもしれません。
では果たして、今からAIのことを勉強しても遅くないのでしょうか。
結論から申し上げると、まったく遅くありません。今からでも十分間に合います。
むしろ、これからしっかりとAIを使い、実践していけば、今AIを駆使している事務所を追い越せる可能性だってあります。(何をもって「追い越した」というのかは置いておいて。)
自己紹介
申し遅れました。司法書士の安井大樹と申します。
私は、平成14年に司法書士試験に合格し、平成19年に新宿で個人事務所を開業しました。開業して約20年が経とうとしており、司法書士としては中堅、人間としては中年(50代)を迎えたところです。
開業後、令和6年に司法書士事務所を法人化し、イージス&パートナーズ司法書士法人を立ち上げました。さらに、同年、三鷹に相続専門の支店を開設し、現在、私を含めて7名体制で事務所を運営しています。
AIとのかかわり
今回、AIに関する記事を書かせていただくことになりましたが、あらかじめ申し上げておきたいのは、私はAIの専門家でもエンジニアでもありません。根っからの文系で、AIに関してはごく普通の一般ユーザーです。
ですので、あまり専門的で難しいことをお話しすることはできないかもしれませんが、もしかすると、逆にAI初心者の先生方や、苦手意識のある先生方に近い目線から語ることはできるかもしれないと思い、執筆をお引き受けさせていただきました。
Xやnoteでも司法書士実務に関するAIの情報を日々発信しておりますので、よろしければフォローをお願いします。
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私とAIとの関わりについて、もう少しお話しさせてください。
ChatGPTが世に出てきたとき、「これはすごいものが出てきた」と直感的に感じ、かなり早い段階で課金して、使い始めていました。
「使い始めていた」とはいうものの、司法書士業務で何に使えばいいのかよく分からず、しばらくの間はGoogle検索の代わりに使う程度でした。
そこから少しずつ試す範囲を広げ、AI自体の進化もあって、現在ではいろいろな業務効率化を進めることができるようになってきました。
いま、私が目標にしているのは、AIを使って事務所の業務の半分を自動化することです。残りの50%は、やはり人がやるべき仕事だと思っています。
ただ、半分でも自動化できれば、できることの幅が格段に広がるはずだと思っています。
まず押さえておきたい、
AIの種類
前置きはこのあたりにして、本題に入らせていただきます。まずはAIの入り口として、AIにはどんな種類があるかというお話です。
最近よく耳にするChatGPTやGeminiといったAIは、ほとんどがLLM(大規模言語モデル = 大量の文章を学習して、人間のように言葉を扱えるようにしたAI)と呼ばれるものです。
難しく考える必要はなく「膨大な文章を読み込んで、言葉のやり取りが上手になったAI」くらいの理解で、まずは十分ではないでしょうか。
代表的な3つのAI
世の中にはたくさんのAIがありますが、最初は代表的な3つを知っておけば困ることはないでしょう。
ChatGPT(チャットジーピーティー)…… OpenAI社が開発したAIです。現在のAIブームの火付け役となった、いわば「走り」の存在です。「AIといえばChatGPT」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
Gemini(ジェミニ)…… Google社が開発したAIです。最大の特徴は、Google Workspace内のアプリ(GmailやGoogleカレンダーなど)と連携しやすいこと。普段の業務でGoogleのサービスを使っている事務所とは、相性がよいAIです。
Claude(クロード)…… Anthropic社が開発したAIです。私がアプリ開発や記事執筆など、いちばん多く使っているAIでもあります。
おもしろいのは、この3社が常にしのぎを削っていることです。ある時期は「ChatGPTがすごい」、別の時期は「Geminiがすごい」、そして今は「Claudeがすごい」といった具合に、トップが入れ替わっていきます。一強で固定されていないというのが、今のAIの世界の特徴かもしれません。
もうひとつのキーワード
「AIエージェント」
もうひとつ、最近よく出てくるのがAIエージェント(指示を出すと、自分で手順を考えて作業まで進めてくれるAI)という言葉です。
これまでのAIが「質問に答えてくれる相手」だったとすれば、エージェントは「作業まで任せられる助手」に近いイメージです。
具体例を3つ挙げます。
Genspark(ジェンスパーク)
私自身も使っているツールです。「○○について調べてまとめて」「この内容でスライドを作って」とお願いすると、AIが自分でいくつものサイトを調べに行き、1本のレポートやスライドの形にまとめて返してくれます。これまで自分で何十分もかけていた下調べや資料の下ごしらえを、まるごと任せられるイメージです。
Claude Code(クロードコード)
こちらは少し専門的で、プログラミングなどの作業をAIに任せたり、パソコン内のファイルなどをAIが直接操作したりするためのツールです。
「こういうものを作って」と指示すると、AIが自分で手順を考え、コードを書き、動作確認まで進めてくれます。非エンジニアでも使えます。AIが「作業そのもの」をこなすという、エージェントの進化をいちばん実感できる例だと思います。
Codex(コーデックス)
こちらはOpenAI社が提供しているもので、立ち位置としてはClaude Codeとほぼ同じです。
ChatGPTのプランに含まれているので、すでにChatGPTを契約している方であれば、追加の契約をせずに試せます(ただし、どのプランを契約しているかによって使える量が変わります。プラン構成は頻繁に変更されますので、最新の情報をご確認ください)。
いま話題の「バイブコーディング」(※コードを自分で書かず、日本語で指示を出しながらAIに作らせていく作り方)は、このClaude CodeかCodexを使うのが一般的です。
私が事務所のツールを作っているのもClaude Codeです。
司法書士は、はじめに何を
使えばいいか
「AIを使っていない司法書士が最初に使うなら、何を使えばよいのでしょうか?」
同業の先生方からよくこんな質問を受けます。
実はこれはかなり難しい質問です。というのも、前述したとおり、AIの進化はとても速く、数カ月前には正解だったものが、あっという間に上書きされることが常態化しているからです。
また、AIはいろいろな使い方ができるため、事務所がどんな規模で、どのような業務をやっていて、何の作業をAIにやってもらいたいのかによって、どのAIを使えばよいかの判断は変わってきます。
ですから、正式な回答としては、
「まずは、ChatGPT、Gemini、Claudeの3つを試しに使ってみて、自分に合うものを選んでください。」
ということになります。
ですが、それではせっかく「一般ユーザー」の代表として執筆をお引き受けした意味がありませんので、ここでは、私の独断と偏見で選ばせていただきます。
2026年9月時点で私が使ったほうがよいと思うものは、以下の2種類です。
- 事務所の所長が使うAI → Claude
- 事務所全体で使うAI → Gemini(Google Workspace)
なぜ、この2種類なのか。以下にその理由を述べていきます。
所長が使うAI ── Claude
なぜ、事務所の所長はClaudeを使ったほうが良いかというと、私自身が実際に使ってみて、法律的な質問に対する回答や、文章の作成などについて、最もロジカルで納得のいく内容を生成してくれるように思うからです。
これは、あくまでも個人的な肌感覚でしかないかもしれませんが、司法書士にとって一番使いやすいのではないかと感じています。端的に言えば、最も「知性」を感じるのがClaudeなのです。
※ちなみに私の周りの士業の方も同じ感覚の方が多いです。
また、WordやPowerPointなどのファイルも生成してくれるので、クライアントにお渡しする資料などの作成も簡単にできてしまうことも、司法書士業務にとっての大きなメリットです。
ちなみに、Claudeに課金すると、Claude Codeも利用できるようになります。これを使うとバイブコーディングなどができ、業務効率化のための簡単なアプリを開発することができます。作成したアプリを事務所内で共有して使っていくようなこともできます。
これも、司法書士事務所の所長としては、大きな魅力なのではないかと思っています。
※私にとっては、これが一番大きい理由です。
事務所全体で使うAI ──
Gemini(Google Workspace)
次に、事務所全体として使うのはGeminiがよいと思う理由です。
Geminiを事務所全体で利用するためには、Google Workspaceのプランを契約する必要があります(※ここでは有料プランを前提としてお話しします)。
Google Workspaceを契約すると、いろいろなツールを事務所全体で共有しながら使うことができます。実はこれがかなり便利なのです。
例えば、カレンダーやメールを事務所全体で共有し、Google Chatで事務所全体のやり取りを見える化する。また、カレンダーからオンラインミーティングのURLをボタン一つで作成して共有し、フォルダやファイルもクラウドで共有、GAS(※ここではGoogle独自のアプリを作れるシステムくらいに思ってください)で作ったシステムを事務所全体で共有、などなど。
とにかく「共有」できるものが非常に多く、その裏側でGeminiが動いているといったイメージです。
そのうえ、一人当たりの価格が割とリーズナブルなため、事務所の懐事情にもやさしいといったおまけ付きです。
ちなみに、うちの事務所では今まで、カレンダーの共有アプリやオンラインミーティングのアプリはそれぞれ別々のサービスを利用していましたが、Google Workspaceについてくる、GoogleカレンダーやGoogle Meetなどに集約することができ、結果として経費を少し削減できております。
AIに課金したほうがよいですか
ここで、ちょっとお金の話が出てきたので、もう一つよく聞かれる質問があります。
「AIに課金した方がよいですか」
という質問です。それに関しての、私の答えは明確です。
「課金した方がよいです」
AIのサービスは課金しないと一定の制限があることがほとんどで、ある程度までしか使うことができません。ちょっとさわってみるくらいなら無料でもできますが、業務でしっかり使っていくためには課金しないとかなり難しいと言えるでしょう。
これからの司法書士業界では、しっかりAIを使っている事務所とそうでない事務所の差が大きく広がってくると思います。ですから、今のうちにしっかりとAIを使っていく必要があり、その前提として、気兼ねなくしっかりと使える環境を整えることが大切です。
なお、AIの種類ごとにいろいろなプランが用意されているので、まずは一番安いプランで試してみて、必要に応じてアップグレードしていく形で良いかと思います。
(ちなみに私は、ここまで本文で出てきたすべてのAIに課金しています。)
まずは、お願いしてみる
AIを使う準備ができたら、AIにいろいろなことをお願いしてみてください。
「できないかな?」と思うこともお願いしてみると意外とできてしまったりすることもありますし、「これはできるでしょう」と思うことが意外とできなかったり、いろいろな発見があります。
そこから「AIの限界」、つまり何ができて何ができないかを、身をもって体験する。これが、今後AIを使っていくうえで何よりも大切な感覚を養っていくことになります。
第1回のお話はここまでとなります。
次回は、司法書士がAIを使ううえでの注意点をお話ししたいと思います。














