検索画面を閉じる
検索画面を閉じる

司法書士の新たなロールアップモデルへの挑戦

司法書士業界の現状を憂う

司法書士の業界は、少子高齢化が進んでおります。司法書士の平均年齢は、53.4歳であり、上場企業に勤める従業員の平均年齢と比べても10歳以上高くなっております。
また、司法書士試験受験者数の減少とも相まって、この傾向はますます強まるものでしょう。

また、司法書士事務所の業務は、司法書士の資格を有する者が取り扱わなければならないものも多くあり、労働集約型の働き方からなかなか脱却できずにいることに加え、効率化しやすい一部の登記業務については中途半端に寡占化が進んでいるほか、時代錯誤な長時間労働やダンピングなどへの対応も一枚岩となることができず、抜本的な構造改革が行き詰まっているように感じます。

もちろん、法改正等にともない、従来の登記業務のほかにも、司法書士の活躍の場が拡がっていますが、その先に見える景色が、確かなキャッシュポイントであるかについては、冷静に見きわめる必要がありましょう。

国民の権利擁護の担い手である司法書士には、日に日に求められるものが高くなっておりますが、その職責に見合ったリターンが期待できなければ、多様で、能力の高い人材が集まってくるはずもなく、尻すぼみになってしまうことは、他の業界を見ても明らかであります。

愛知県で初の5事務所統合による司法書士法人設立へ

些細なきっかけでつながった5名の司法書士が集まり、各自の事務所を統合して、法人化しようとする話が持ち上がりました。

私どもは、経歴も背景も異なる司法書士ですが、業界に対する問題意識は共通しており、なおかつ、これらを独力で解決することは難しいと考え、一緒に盛り上げて、がんばろうと協働することとなりました。

これは、高齢化する司法書士事務所の承継の問題に対しても、後継者が見つからなくて苦労されている先生方や業務の量を調整できず困っておられる先生方には、ひとつのモデルケースになればとも考えております。

これからは、事業承継やM&Aに関与する司法書士も増えるであろうと予想しますが、教科書で学んだことだけではなく、実体験にもとづき業務やサービスを組み立てることができればと考えています。

強みを活かした役割分担、きめ細かい地域戦略

厳しい試験を突破し、実務経験を積んだ司法書士でありますから、一定の能力担保はなされています。つまり、経験の浅い分野、未踏の領域であっても、調べて考えさえすれば、妥当な落とし所にまでは誰でもたどり着けます。

しかし、私どもはこれをビジネスとしてやっているため、気が済むまで際限なく時間をかけるわけにはまいりません。

複数の司法書士が協働する意味は、それぞれの持ち味を伸ばしつつ、より多くのお客様に質の高いサービスを提供できるようになることです。経験値や実績は、個人でやっているときよりも数倍の速さで積み上がります。

それぞれが得意なことに集中することで効率を上げ、今までは取り組みたくてもできなかったことへリソースを分配することができるようになりました。参画した司法書士が各々これまでやってみたかった営業、販促、事業企画、マーケティングなど、司法書士業務に留まることなく、積極的に挑戦しています。

また、複数の営業所を設置している理由として、司法書士事務所を利用するお客様は、必ずしも通信機器の操作に長けている方ばかりではなく、メールやリモート面談だけでは対応ができません。

地元密着を深めることと、営業地域を広げることを両立させて、ご来店いただきやすい環境を整えることが営業戦略上でも有利であると判断したためです。

法人としての特性を存分に発揮した事業展開へ

つきあいのある司法書士から、遺言をつくるのに、遺言執行者だけを引き受けてもらえないかと相談を受けることがあります。

法人は自然人とは異なり、いわゆる「先生が先に死んでしまったらどうするの?問題」が基本的には起こりません。

遺言執行者や成年後見人などの財産管理業務を引き受けるには、法人ならではの永続性と、司法書士個人の財産とは明確に分別管理できるところでの安心感があります。

最近では、新たに大口の取引を始められるところからは、司法書士が複数所属している司法書士法人を探していたと言って、これまでの依頼先から切り替えていただくことも増えてまいりました。

お客様からは、数多くの案件をまとめて依頼できるうえ、機動的に対応してもらえることに対して、司法書士法人の強みが評価されたものと考えます。

一方で、これらは、BCPの観点からも重要な指摘かと思います。

ひとり親方の事務所では、いくらスタッフが揃っていたとしても、所長が仕事ができなくなってしまうようなことがあれば、取引先のビジネスにも影響があります。

この点、司法書士法人は、複数の司法書士により、複数の営業所を展開できるため、感染症や災害が発生したときでも、可能な限りリスクを分散しながら、事業を継続できるところに強みがあると考えます。

司法書士の新たなロールアップモデルとして

司法書士のはたらき方は、一見してさまざまあるように見えますが、選択肢は多くはありません。

合格後に即時独立して自営でやっていく方もあれば、司法書士事務所へ勤務して実務経験を積む人もあります。最近では、司法書士法人へ勤務する方も多くなっているようです。

これらを見ても、独立するか、勤務するかの一方通行であることがほとんどである中、一定期間を独立自営をされてきた司法書士が、司法書士法人や司法書士のグループへ合流するという選択肢もありえるのではないかと考えます。

弁護士や税理士には、数百人単位の資格者を有する4大、5大と呼ばれる事務所がありますが、司法書士にはまだそれらはありません。

ビジネスにおいて、数は力です。ある程度の規模感は、営業にとっては有利になることは言うまでもありません。零細事務所が全国に散在している状況で、大規模化にはチャンスしかありません。

また、複数の司法書士が各々の専門性を尖らせていくことは、顧客満足を向上させることや業務の効率化につながりますが、これを進めるにも、人が集まらなければやりきれないことです。

簡単なことは自分で調べて解決する人が増えている中、私ども司法書士が専門家として活躍するためには、絞り込みをしながら、能力を尖らせていくことが大切であると考えます。「なんでもできます」は、何もできないことと同じです。

副業、複業の時代と言われる中、司法書士もまた、相乗効果のある事業やレバレッジを効かせられる事業を組み合わせることにより、高く成長できるほか、多くの利益を得ることも望めるでしょう。

なにより、自身のからだが動かなくなってしまったときでも、収入が途絶えないような仕組みをもっておくことを考えておくべきで、倫理的な行動を継続するにも、まずは生計に余裕があることが前提です。

困難な試験を乗り越えてきた司法書士が存分に活躍し、それに見合った収入が得られて、充実した生活ができるような環境を実現することも、ひとりではできませんが、みなさんで力を合わせれば、達成できるはずです。

If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

「早く行きたければ、ひとりで行きなさい。遠くへ行きたければ、みんなで行きなさい。」

というおなじみのことわざですが、能力のある人が集まって、互いに協力し合うことで生まれるエネルギーは、とても大きな推進力になるものと考えます。

個々人が司法書士としてのあり方に向き合い、自己実現のツールとして、司法書士の資格を有効に活用していただければと思います。

【執筆者紹介】

司法書士 野田啓紀
(グラーティア司法書士法人 代表社員)


〒444-0059
愛知県岡崎市康生通西三丁目5番地
TEL 0564-73-1612/FAX 0564-73-1613

愛知県内に3か所のオフィスを展開し、地元密着で営業をしています。
グラーティア税理士法人、グラーティア行政書士法人とともに、グラーティアグループを形成し、愛知県三河地域では初の総合士業グループとして、ワンストップサービスを提供しています。
https://gratia-s.jp/
https://twitter.com/sakuya_uk
https://www.facebook.com/gratiashihoushoshi

PREV
勤務司法書士として知っておくべき労働条件 ~将来の独立開業を見据えて~(2/2)
NEXT
司法書士法人の経営者として働くということ