司法書士JOBサーチをご覧のみなさま、初めまして。
私は、鳥取市で司法書士・行政書士をしております、谷口毅と申します。
事務所の形態としては、司法書士1人、事務員2人の一般的な地方の事務所です。
不動産登記、商業登記、簡裁訴訟、裁判書類作成、成年後見、民事信託など、幅広い業務を扱っています。
私は、通常業務の他に、「信託の学校」という、民事信託を学ぶオンライン上の会員専用サービスの代表者をしています。
「学術と実務の架け橋になる」という理念を持ち、民事信託支援の実務家をサポートするため、充実したサービスを提供しています。
なお、初心者向けの公開セミナーを、4月9日(土)、4月16日(土)、4月23日(土)の3回に分けて行います。
各1時間の講義で合計3時間となります。
連続で3回受講していただくことをオススメしますが、1回のみの参加でも可能ですので、お気軽にご参加をお待ちしております。
申込は下記からお願いします。
さて、私が初めて民事信託支援業務を行ったのは、平成23年のことです。
当時、私は合格して開業したばかりでした。
自作したばかりのホームページをたまたまご覧になった、アメリカ在住の方から、相続に関するお問い合わせをいただいたのです。
相談内容を要約しますと、数年前に亡くなった亡父の自宅が鳥取にあり、相続登記が未了であるとのことです。
相続人は、母A、長男B、長女Cです。詳細は書けませんが、誰の名義にしても、後日のトラブルが想定される案件でした。
依頼者のご希望は、「3名ともが、安心して、最期までこの自宅に住めること」でした。
つまり、誰がどういう順番で亡くなっても、ご自宅の権利が守られる必要がありました。
ここで、誰に相続登記をすればベストなのかが分からない、ということで、相談のメールをいただいたのです。
私は、「3名が亡くなる順番は、計算上、6パターンしかない。うまく信託契約を作成すれば、誰がどういう順番で亡くなっても、最後に生き残った人のものになるのではないか。」と考えました。
そこで、まずは母Aの名義に相続登記をした上で、母Aを委託者兼受益者、長男Bを受託者とする信託契約を締結することをご提案したのです。
信託契約の中では、当事者が亡くなった場合に、委託者、受益者、受託者がどう変化していくのか、という6種類のパターン分けをしました。
そして、3名のうちの2名が亡くなったタイミングで信託が終了し、その時に存命の1名に、財産が帰属するようにしたのです。
当時は、身の回りに信託を取り扱う知り合いもいませんでしたし、書籍もほとんど存在しませんでした。
弁護士さんが書かれた、入門用の信託法のテキストだけをもとに、全くのゼロから、信託契約書を作成し、登記をしたのです。
多分…必要なのは…
信託の目的と、当事者と、信託財産の管理方法と、信託の変更の定めと、受託者の変更の定め、受益者連続の定めと、信託の終了事由と、最後の財産の帰属と…あと…なんだろう…
と、まったく手探りの状態でした。
今から見ると、もちろん、一定の甘さが残る契約書ではありますが、それでも、大きく的を外したものではなかった、と自負しています。
さて、上記の通り、当初は母Aが委託者兼受益者、長男Bが受託者でした。
しかし、その1年後、思いがけないことに、長男Bが突然、心臓の疾患で亡くなったのです。
そこで、当初の契約通り、受託者を長男Bから長女Cに変更しました。
ここで、委託者兼受益者は母A、受託者は長女Cという関係で信託は継続していきます。
そしてその9年後、母親Aも亡くなりました。
その時にご存命だったのは、長女Cです。
信託を終了させ、長女Cに自宅を帰属させました。
10年間かけて、自分の作成した契約書が正しかったという答え合わせをするような、不思議な感慨を抱きました。
開業したばかりの時にこの案件を受任したことで、私は、信託の魅力に取りつかれ、勉強を続けていきました。