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司法書士でも多様な働き方ができる時代へ

ごあいさつ

はじめまして、東京都内にて司法書士をしております佐藤良基(さとうりょうき)と申します。

このコラムでは「司法書士ならこうあるべき」といういわゆる業界の常識とされてきたことに疑問を持ちながら、波風を立てずに実行してきた現在までに至る私のこれまでの試行錯誤の結果をお伝えいたします。

2010年6月に独立開業してから12年以上、試行錯誤の繰り返しでした。

東日本大震災や現在も続く新型コロナウイルスによる社会の混乱。その中でも事務所経営は当然待ったなし。

難関試験を突破した司法書士であろうと自分や家族の生活のためには背に腹は代えられません。

ときに「資格を取れば将来安泰」なんて安易なキャッチコピーに飛びつくひともいるかもしれませんが、当然そんなに甘い世界ではありません。

とはいえ、そんな激動の時代でもなんとかこれまで事務所経営をやってこられたのは司法書士という資格のおかげです。

もしかしたら司法書士の資格を取っても仕事を獲得できないかもしれない。
将来AIが発展して司法書士の業務がなくなるかもしれない。

そのような漠然とした不安を感じているひとは多いかもしれません。

それでも司法書士には明るい未来がある、私はそう断言します。

工夫しだいでいくらでも可能性が拡がる資格だからです。

紹介していただける事務所づくり

私が12年以上、事務所を廃業せずにやってこられたのはたくさんの方にお客様を紹介していただくからです。

仕事の獲得方法はたくさんあります。ウェブ集客、飛び込み営業、セミナー営業、パンフレットや看板など広告を出す方法もあります。

私もこれまでウェブ集客やタウン誌への出稿など色々と試してきましたが、今では紹介のみで事務所経営が回る状態になりましたので、紹介のみということになります。

お恥ずかしい話なのですが、ウェブサイトは何年も更新しておりません。

どのような方からご紹介いただくのかといいますと、いわゆる税理士や行政書士など他士業の方からが3分の2、既存のお客様からが3分の1になります。

司法書士のメイン業務といえば登記になりますが、登記にも不動産登記と商業法人登記の2つに大きく分かれます。

私の場合はほぼ100%商業法人登記の業務になります。以前は不動産登記もそれなりの数を受任していたのですが、営業方法を紹介に舵を切ることで結果的に商業法人登記のみという形になりました。

税理士は法人顧問を数多く抱えています。

顧問先の会社で定款変更や役員変更など登記が発生すれば司法書士を紹介する流れになりますから、そのタイミングで私に連絡が来ることになります。

許認可業務を数多く抱えている行政書士についても同じことがいえます。
税理士は全国に約8万人、行政書士は約5万人です。

司法書士は2万人ですから、単純に計算すると司法書士は足りないことになり、税理士・行政書士からは重宝される存在になりうるということになります。

ちなみに弁護士は約4万人です。他士業に必要とされる司法書士になることが軌道に乗るための一番の近道ということになります。

例えば1000社の法人顧客を獲得する、と仮定してみてください。
1社1社訪問して1000社を顧客にしようと思ったらとても大変であることが想像できます。

しかし、100社顧問先がある税理士事務所の代表10人と関係を作るとしたらどうでしょうか。一気に現実味が増してきます。

お客様からの紹介に関しては、自分の仕事ぶりが認められた何よりの証拠ですから一番やりがいを感じる部分であり、自信も付いてきます。

目の前のお客様のために一生懸命仕事をする姿は、必ずお客様が覚えてくださるということです。

開業当初はなかなか仕事に恵まれず苦しい時期もありますが、信頼に信頼を積み重ねることで雪だるま式に仕事が増えていくのが紹介営業の特徴です。

ひとりでは手が回らなくなったときはいよいよ司法書士JOBサーチの出番ということになります。

司法書士業界の常識とは一体何なのだろうか

司法書士としてやっていくと決めた以上、司法書士業界の常識や慣習は大切にしなくてはなりません。

しかし、それらに囚われすぎると息苦しく感じるものです。自由になりたくて独立したのにますます不自由になっていくのでは本末転倒です。

司法書士を志した強い気持ちもどこへやら…、目的を見失ってしまったときほど虚しいものはありません。

倫理上重要なことは必ず守るべきですが、疑問に感じる常識や慣習はまずは自分なりに見直してみてはいかがでしょうか。私の場合は次のことをやめました。

・常にスーツを着ること
意味もなくスーツでいる必要はありません。
暑い日は特に涼しい服装のほうが仕事の効率が上がるものです。

・FAXの送受信
必要ない、時代遅れのツールだと感じるならまずは自分がやめてみるのがいいでしょう。
業界内で使われているから仕方なく使う、という意識ではいつまで経ってもなくなりません。

・年賀状、お歳暮、お中元など
年賀状は年末の忙しい時期にはとにかく大変です。

しかもSNSでは声をそろえて「準備してない、どうしよう」の大合唱。

それなら無理にやる必要ないのではないかと廃止しました。

お歳暮やお中元も同時に廃止。

送りたいときに送りたいひとに送りたいものをメッセージを添えて送ればそのほうが喜ばれるはずです。

・金融機関や不動産業者への営業
開業すると誰しも一度は言われたことがあるのではないでしょうか。

「やっぱり銀行と不動産屋には営業に行かないとやっていけないよ」

はじめのうちは「そういうものか」と思っていたものですが、みんながみんな同じところに営業していたら仕事なんか来るわけないよな、と早々に気づくことに。

頭を下げてもらえる仕事は筋が悪いことも多いですし、足元を見られがちです。

受け身の立場にならず、主体的に活動したいというのが本音です。
司法書士の場合はキックバックの禁止など一般的な商慣習が通じない面もありますから、注意が必要です。

ヒトに根差した事務所経営

私は2010年6月にディズニーランドがある千葉県浦安市で開業しました。

実はそこから何度も事務所を移転しています。

浦安市(事務所賃貸)→品川区(共同事務所)→目黒区(レンタルオフィス)→渋谷区(事務所賃貸)→品川区(ワンルームマンション)→渋谷区(レンタルオフィス)→渋谷区(自宅兼事務所)→中野区(ワンルームマンション)※現在

これだけ事務所を移転する司法書士はめずらしいのではないでしょうか。
司法書士の事務所経営は、その地域に根差すことを念頭に置くことがほとんどだからです。

だから、一度決めた事務所の立地を移転することにはとても勇気がいります。
それまでその地域で獲得したお客様や事務所の認知を捨てることになるからです。

それでは、なぜ私はこれだけ事務所を移転することができたのか。それは地域に根差すのではなく、ヒトに根差した事務所経営をしてきたからです。

「浦安の佐藤先生だから仕事をお願いしたい」なのか、「商業登記に詳しい佐藤先生だから仕事をお願いしたい」なのか。

前者の場合、私が浦安から離れることによって仕事を失うことになります。しかし、後者なら限度はありますが、どこにいても仕事を失うことはありません。

私はヒトに根差した事務所経営をしていると自ら気付いたときから事務所を移転することに躊躇がなくなりました。

お客様のために、自分のために、家族のために、もっといい場所で仕事ができるのではないかと感じたらすぐに行動に移します。
その結果、これだけ事務所を移転することにつながっています。

この間、大きな売り上げの増減はありません。ヒトに根差した事務所経営の大きなメリットです。

さいごに

私の働き方やこれまでの変遷についてお伝えしました。
私は自分の性格や自分の与えられた環境をよく理解しているつもりです。

この働き方は東京23区だからできることかもしれません。これから地方に移転するとしたら同じ働き方はできないかもしれない。それはそれでいいと思っています。

大事なことは「こうでなくてはならない」と思考停止に陥って何も考えずに常識に縛られ、他責志向になってしまうことです。

どんな状況でもどんな環境でもどんな時代でも通用する司法書士に私はなりたい。常にそう意識しています。

司法書士JOBサーチにはたくさんの司法書士が登録しています。

ぜひ各事務所の特色を感じ取りながらご覧いただければと思います。

【執筆者紹介】

佐藤良基司法書士事務所
代表 佐藤良基

1981年宮城県栗原市生まれ。同志社大学経済学部卒。
2010年に千葉県浦安市で独立開業。

過去にはパネルクイズアタック25に出場し、旅行獲得。

著書に
①「戦いたくない士業のためのストレスフリー仕事術: ジョーシキもしがらみも捨てる! シンプルに『資格』と『自分』を活かそう!」(Kindle版 (電子書籍))

②「合同会社(LLC)設立&運営 完全ガイド―はじめてでも最短距離で登記・変更ができる!」(技術評論社)
がある。

Twitter
https://twitter.com/satoryoki

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