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司法書士事務所とチームビルディング

こんにちは、ちょっと変わった社労士、チームビルディングコンサルタントの小河みさきです。
このコラムは、司法書士やスタッフを雇用し事務所拡大を図ったものの、思うように売上が伸びないとお悩みの所長先生に向けて書かせていただくものです。

現状打破に何かしらのヒントになれば幸いです。

人が増えたのに売上が伸びず、所長先生がいつまでも忙しい理由

士業事務所が今後発展するためには、次のようないくつかの要件があります。
こんなことはすでにご存じでしょうし、取り組んでもおられると思います。

・専門知識とスキルの向上
・デジタル化と技術の活用
・クライアントサービスの向上
・マーケティングと広報
・チームビルディングと人材開発
・法務業務の多様化
・法的倫理とコンプライアンス

今回書かせていただくテーマは、上記の要件の1つである「チームビルディングと人材開発」です。
もし現状が有資格者やスタッフを採用したのに売上が伸びない、相変わらず所長先生は忙しく余裕が無いという状態であるなら、業務の流れおよび業務遂行に必要なコミュニケーションがこんな形になってしまってはいないでしょうか。

つまり、所長先生が1対多の形で職員スタッフに対応しているような状態です。もちろん、採用する度に同じようなことを繰り返し教えていくわけにはいかないので、業務マニュアルを作成されている事務所も多いかと思いますし、先輩が後から入所した職員スタッフを教えるということも行われていると思います。

それでも最終決済は所長先生が行い、またミスやトラブル対応の際には代表として対応されるため、やはり事務所内の業務を円滑に進めることになにかと時間を使われているでしょう。

所長先生としては、難易度の高い自分しかできないような業務に専念したいところですが、人が増えれば増えるほど、案件が増えれば増えるほど、ご自身の思うように時間を使えず、休日返上で仕事をするという悪循環に陥るのではないかと思います。

では、理想の姿とはどういったものでしょう。
私達チームビルディングSSR理論を提唱するチームビルダーは、図2のように考えています。

「え? こんなふうになんでもかんでも結びついていたら逆に時間ばかりかかってしまう!」と思われましたか?(笑)

このラインは常に繋がっているわけではなく、必要な時に必要なタイミングで結ばれるものです。先ほどの図1との大きな違いは、情報を出す人、情報を受け取る人、判断する人、判断を受けて行動する人がその都度異なるということです。

いったいどんな状態をさすのかを、私の好きなサスペンスドラマ「科捜研の女」で説明させていただきます。

サスペンスドラマ「科捜研の女」にみるチームビルディング

皆さんは、沢口靖子さん主演の「科捜研の女」シリーズをご存じですか?
シーズン23まで続いている高視聴率の長寿番組です。

ドラマは京都府警科学捜査研究所(科捜研)のメンバーが京都府警察本部の刑事と協働して、難事件の真相を科学の力で解明し、解決していくというストーリーが描かれます。


   
研究員はそれぞれに担当があり、何か事件が持ち込まれる度に自分のやるべきことに、ササッと取りかかる専門家です。ドラマでは個々が自分の担当業務に没頭する姿と、全体ミーティングでそれぞれの業務の成果報告、話し合いの場面が交互に映し出されます。

年齢や立場がある設定なので丁寧語は使われますが、思ったことをオープン&フェアに口に出して話し合う様子がなんとも心地よい感じです。毎回事件解決の中心人物は沢口靖子さん扮する法医担当研究員の榊マリコですが、その他の研究員や協力する刑事たちがいなければ決して真相に至らず事件を解決できないのです。

「いやいやそれって単にチームワークが良いってことなんじゃ・・・・」って思われたかもしれませんが違うんです。「チームワーク」と「チームビルディング」は、両方とも組織内での協力と連携を促進するために使用される用語ですが、それぞれ異なる側面を指しています。

ちょっと用語の説明ぽくなりますが、「チームワーク」はチームが共同で目標を達成するためにチームメンバーが協力するプロセスのこと。

一方の「チームビルディング」は、組織やチーム全体の効果的な機能を向上させ、メンバー間の信頼や相互理解を強化するためのプロセスを指しています。

つまり、チームワークは業務完遂のためにメンバー同士協力することであり、チームビルディングはメンバー・組織の成長と同時に組織の成果をより最大化させようとする取組みということです。

「○○さん、もし手が空いてたら手伝ってくれないか」はチームワークで、「この業務は○○さんが適任だ。(○○さんなら適切にできるはず)」「このポジションには、××が強みである○○さんこそがふさわしい」(適所適材)というのがチームビルディングとなります。

なので、科捜研チームは研究員全員がそれぞれの果たす役割を理解しており、事件解決という目標に向かって取組む過程において、より真相に近づくために必要と思われる発言を選択して話し、かつ行動を起こしている点で、チームメンバーの成長と科捜研としての成果を生み続けるチームビルディングだと考えます。皆さんの事務所でも分業は行われていると思います。

その分業は職員スタッフの成長につながり、かつ事務所の成長につながるものでしょうか。お互いがお互いの強みを引き出して、より早くより質の良い成果を生み出すことにつなげることを理解しての分業になっているでしょうか。

新時代の働き方とチームビルディング

チームビルディング概念そのものは決して新しくありません。チームビルディングがここ何年かで再び脚光を浴び、あちこちで聞かれるようになったのは、ここ40年近くの世の中の変化が影響しています。

少し前はVUCA(ブーカ)の時代という言葉が飛び交い、日本社会では少子高齢化が加速、価値観や働き方も多様化するなかで、人も企業も変化に対応する能力を求められています。そして新型コロナウイルスや戦争などの影響で、私達を取り巻く世界の変化のスピードは緩むどころか速くなっているように感じます。

それはつまり、以前のような人材育成や人材マネジメントでは対応できないことを意味しています。なぜなら人が育つには時間がかかるからです。旧態依然としたやり方で人が育つのを待っていては、そのうち淘汰されてしまいます。

これからの時代、成果を出せる組織に共通するのは、3つの力、人材力(Strengths 強み)、組織力(Structure 構造)、関係力(Relation 関係)です。

変化の激しい時代に時間的余裕がないなら、個人の強みや長所を最大限に活かすことが成果を出す最大の近道なのです。なぜなら強みや長所を活かせる場面では成果は上がりやすく、逆に弱みや短所をあえて克服する必要のある場面では、望ましい成果は上がりにくいものだからです。

さらにこれからの組織では、規則やルールだけでなく多様な人材のベクトル合わせをするためのミッション・ビジョン・バリューが当たり前のように必要となります。仕組みがあるだけでなく、どこに向かうのかが明確で、自分や仲間の果たす役割をしっかり理解して、お互いにそれを果たそうとするエネルギーの高い状態を組織力があると表現します。まさしく先ほどの科捜研チームの状態です。

最後に科捜研チームのように、単なる業務上の会話ではなく対話を通じてお互いに理解し、良い影響力を与え合う関係をつくることが、さらにお互いを成長させ、結果として成果を生み出します。そのためには、コミュニケーションの取り方を全員が学んで、お互いのやる気と能力を引き出すように実践することが不可欠となります。

この3つの力が影響し合って(人材力×組織力×関係力)相乗効果を発揮している場面では、成果を出し続けることが可能です。生まれた成果は組織をさらに次のステップへと押し上げ、どんどんスパイラルアップして人も組織も成長する過程を「チームビルディング」と呼んでいます。

もしミーティングで新しい案件の概要を説明した際、こちらが指示しなくても職員スタッフが「じゃあ、○○は私がやりますね」「いついつまでに、○○の情報は揃えておきます」と、どんどん進めてくれるようになったら?そんなイメージを描いただけで、ワクワクが湧いてきませんか?

まとめ

このたび書かせていただいているチームビルディングは、そもそもどのような事務所を目指すかというビジョン(なりたい姿・ありたい状態)がなくては成り立たないものです。

私達は正解を探すことに慣れ過ぎているため、もしかしたらビジョンと言われてもという方もいらっしゃるかも知れません。

貴所の強み・弱みはどんなことでしょうか。
〇年後どんな人達と一緒に働いていますか?
〇年後には売上をいくらにしたいですか?
そしてどんな事務所運営ができていたら最高でしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

【執筆者紹介】

特定社会保険労務士
チームビルディングコンサルタント
オフィスMirai 小河 みさき

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