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会社設立登記 司法書士業務の実践②【08/18】

会社設立登記

次に会社設立登記実務を見ていきましょう。

商業登記実務の基本は、何といっても会社設立登記手続きです。会社設立登記手続きが分かれば、商業登記実務全体が見えてきます。

会社設立登記手続きには、定款の各条項や登記事項を作り上げていく作業が必要になります。

その手続きの中で、定款条項、登記事項を逐条的に理解することが、商業登記全体を理解する近道となります。

また、設立登記手続きは企業法務への入口となります。

単に、会社の「殻」を作るだけの設立登記手続きをするのであれば、我々はただの「手続屋」になってしまいます。

クライアントの事業展開を理解し、それに合わせた会社設計を提案することで、将来不都合が生じないように経営者を法務面からサポートすることができるのです。

経営者は一般的に法律に関しては全くの素人ですが、会社設立後は認識の有無に係わらず、嫌がおうにも法務リスクに晒されることになります。

法務リスクを軽減するためには、法律を理解し、それに自社の現状を当てはめ、将来起こりうる法務リスクを予測しなければなりません。

しかしながら、経営者は本業に忙しく、そのような時間はありません。

そこで、司法書士がプロフェッショナルの視点からアドバイスし、経営者の法務リスクを予防することが求められるのです。

また、経営者側から見れば、これから会社を運営していく経営者にとっては、会社設立登記手続きは、自社の現状や法務リスクを理解するまたとないチャンスと言えます。

司法書士にとっても、定款条項や登記事項の説明など一連の会社設立登記手続きを通して、その専門性をアピールできる絶好のチャンスなのです。

ここで、専門性をしっかりとアピールでき、信頼を掴むことができれば、設立登記後も何かあれば依頼を受け続けることができるでしょう。

会社設立登記手続きをどのように位置づけるかにより、クライアントにとって「手続屋」で終わるのか、プロフェッショナルとして一生頼られる存在になるのか、大きく違ってくるのです。

それでは、会社設立登記手続きについて、ポイントを確認していきましょう。

会社設立登記の相談が来たら、一般的には以下のような流れで登記手続きの完了まで進めていくことになるかと思われます。

【会社設立登記手続きの流れ】※株式会社の場合
1.設立希望日の確認

2.法人形態の確定

3.設立チェックリストの事前ファックス(またはメール)

4.スケジューリング、具体的内容の打ち合わせ

5.商号調査、会社内容の確定

6.会社実印作成、印鑑証明書取得、資本金払込

7.捺印書類作成

8.捺印、必要書類原本の預かり、登記費用の精算

9.定款認証

10.設立登記申請

11.登記完了、書類のお渡し

設立希望日の確認

会社設立の相談を受けた場合、まず確認しなければならないのはいつまでに会社を設立したいかという、会社設立希望日です。

至急会社を設立したいという相談には注意が必要です。現実的に、設立希望日までに手続を全て行うことが可能なのか検討が必要となります。

至急会社を設立したいということであれば、すぐに具体的な内容を打ち合わせして、準備を進めなければなりません。

他の案件とのスケジュールの兼ね合いもありますし、自分自身が受任して対応することが可能なのか検討しなければなりません。

一度受任したら最後までやり切らなければなりません。途中で「出来ませんでした」では、専門家としての責任を問われる可能性もあります。

対応できないと思われるのであれば、受任を断ることも考える必要があるでしょう。

また、こちらが対応出来たとしても、設立登記手続きにはクライアントの協力も必要となります。

例えば、発起人が複数の場合、それぞれ印鑑証明書を取得してもらう必要がありますし、資本金の払い込みも必要です。

役員を複数置く場合も、同様にそれぞれの印鑑証明書が必要になることもあります。

会社実印も作成してもらわなければなりませんが、会社設立までに間に合うのか、間に合わないようであれば、取り敢えず個人実印などを代用することも考慮しなければなりません。

設立登記書類には、各人の個人実印や会社実印の捺印が必要になりますが、それがスムーズに出来るのかということも問題になります。

設立者の一人が遠方に居住していて、捺印に時間がかかってしまうなどということもよくあります。

そのような場合は、設立希望日を延期してもらわざるを得ないことになります。

至急の会社設立については、自分自身が対応可能か、クライアントの協力を得ることができるのかをよく見極めた上で受任することが大切です。

ポイントレッスン 会社名義の銀行口座はいつ作れるか?
クライアントが会社設立を急ぐ理由として、すぐに商取引が発生してしまうので、至急、会社名義の口座が必要だということがあります。

請求書に記載する商品代金などの振込先口座名が個人名義では、イメージが悪く、対外的な信用力の問題になってくるからです。

クライアントにとって、会社名義の口座をいつ開設出来るのかは重要なことなのです。

会社設立登記手続を行うに当たり、クライアントに対する説明をする中で、「登記申請日が会社の設立日です。」と説明することがあります。

この場合に、クライアントがよく誤解してしまいがちなのが、会社設立日(登記申請日)に口座が開設出来ると思い込んでしまうことです。

確かに、会社設立日には法人格を取得できるので、理論上可能だと言えそうですが、実際には、金融機関で法人口座を開設する際に、会社設立後の履歴事項証明書、定款、印鑑証明書などの証明書類を求められるのです。(その他にも、事務所の賃貸借契約書や商品の発注書といったような会社が実在し、業務を行っていくことを証明出来るような書類の提示を求められることがあります。)

ですから、銀行口座を開設できるのは、少なくとも登記が完了し、履歴事項証明書や印鑑証明書などが取得できるようになってからという説明が必要なのです。

加えて、最近では、振り込め詐欺等の影響から、法人口座の新規開設の審査が厳しくなっており、都市銀行では審査に1週間程度かかることがほとんどです。

設立登記申請後、登記が完了するまでに約1週間、その後銀行の審査で約1週間程度かかることを考えると、口座の開設までに少なくとも設立登記申請から2週間程度かかることが予想されます。
一般的に口座開設は都市銀行の審査が最も厳しく時間がかかると言われています。

一方で、地方銀行や信用金庫などの審査は都市銀行に比べて緩やかで、期間も短く、中にはその日のうちに口座開設出来る金融機関もあります。
とにかく口座開設を急ぎたいということであれば、取り敢えず、地方銀行や信用金庫などでの口座開設を考えてもよいでしょう。

口座の開設は司法書士業務としては直接関係ありませんが、クライアントの会社運営のためには、広い視野でのアドバイスが求められるのです。

法人形態の確定

設立希望日と同時に確認しなければならないのは、どの法人形態にするかということです。

どの法人形態にするかによって、今後のスケジュールや具体的な打ち合わせ内容が異なってきますので、クライアントとの相談の中で、予め確定しておく必要があります。

事業を行う法人形態には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社、一般社団法人などがあります。

この中で、司法書士がクライアントから相談を受けることが最も多い形態といえばやはり株式会社でしょう。

法務省の登記統計から見ても分かるとおり、設立登記件数で株式会社が群を抜いて多数を占めています。

【設立登記件数 法務省登記統計より】
(単位:件)

株式会社は従前から知名度も高く、平成18年5月1日の会社法施行による最低資本金規制の撤廃や取締役1人から設立可能となったことなどから、設立に関するハードルが低くなり、設立しやすくなりました。

私の事務所で受ける新規設立の相談も、大多数が株式会社です。

そして、株式会社の次に多いのが合同会社です。合同会社は、会社法により設立が可能となった法人形態ですが、年々知名度も上がっており、その設立件数も飛躍的に増加しています。

合同会社は定款認証が不要なことから、設立登記手続きに関する費用が安く済むということが設立時における一番のメリットです。

また、役員の任期がないことや、決算公告義務もないことなどから、経営コストも低くて済むことも特徴です。

特に、税務対策などのために会社設立をする場合など、法人形態を問わないのであれば、合同会社の低コスト面でのメリットが大きいといえます。

合同会社に次いで設立登記件数が多いのが一般社団法人です。

一般社団法人は、平成20年12月1日に施行された「一般社団法人および一般財団法人に関する法律」により設立できることとなった法人ですが、平成20年の施行以来、設立登記件数が年々増加してきました。

平成25年に特例民法法人の移行期間が満了をしたため、設立件数が大きく増加しましたが、それ以降は一定の設立件数を保っています。

一般社団法人は、公益的な活動もできますが、会社と同様の収益事業を行うこともできます。

その特徴として、剰余金を分配することができないことが挙げられますが、中小企業では剰余金の分配など行っていない会社が大多数で、実際には役員報酬として支給していることを考えれば、会社と変わらない状態で収益事業を行うことができると言いえます。(一般社団法人も役員報酬や従業員給与の支払いは可能です。)

また、一般社団法人が非営利型法人に該当する場合は、税務上の恩恵を享受しながら運営できる可能性もありますので、それも一つの魅力といえるでしょう。

一方、合資会社、合名会社は新規設立登記件数がかなり減少しています。

旧商法時代には、株式会社の最低資本金が1000万円以上、有限会社の最低資本金が300万円以上という規制があり、合資会社、合名会社には資本金規制がなかったことから一定のニーズがありましたが、今では最低資本金規制が撤廃されましたので、無限責任社員を要する合資会社、合名会社をあえて選択するメリットが少なくなったというのが理由ではないかと考えられます。

以上のような法人形態の中で、クライアントの事業内容や方向性、今後の展開などを考慮して、クライアントに合った法人形態を提案することが、プロフェッショナルとしての司法書士の役割といえます。

そのためにも、普段から各法人の違いを意識して利用の仕方を考え、クライアントに提案できるようにしておくことが大切です。

各法人の比較はあらゆる角度から行うことができますが、次の図表では、株式会社、合同会社、一般社団法人について、設立登記手続時にクライアントから質問を受けやすい箇所をまとめましたのでご参照ください。

【法人形態別比較表】

株式会社合同会社一般社団法人
登録免許税の最低額15万円6万円6万円
設立時の定款認証の要否必要
(認証手数料5万円)
不要必要
(認証手数料5万円)
設立者発起人1人以上社員1人以上社員2人以上
(設立後は1人でもよい)
利益配分の比率出資額に比例した配分出資額の多寡に関係なく自由な配分が可能利益配分不可能
(役員報酬は可)
機関設計の自由株主総会と取締役1人が最低限必須特に制約なし社員総会と理事1人が最低限必須
議決権原則として株式数に応じて原則として1社員1議決権原則として1社員1議決権
決算公告の義務必要不要必要
役員(社員)の任期の有無原則:取締役2年
   監査役4年
(非公開会社の場合は最長10年まで伸長可)
※簡易的に記載してあります。
なし原則:理事2年
   監事4年
(伸長不可、監事は2年まで短縮可)
※簡易的に記載してあります。
代表者代表取締役代表社員代表理事
認知度高い低い低い

設立チェックリストの事前ファックス(またはメール)

設立希望日、法人形態が確定したら、次は具体的な内容を決めていかなければなりません。

具体的な内容を決めていくに当たり、初めて会社を設立するクライアントにとっては何をどのように決めたらよいのか分からないことがほとんどです。

こちらからリードして、決めてもらう事項をピックアップし、ひとつひとつ説明し、理解してもらった上で確定していく必要があります。

打ち合わせ時にこれを全て行おうとすると、非常に時間がかかり、最後まで辿り着かずに相談時間が終了してしまうこともあります。

事前にある程度決めてもらっておけば、打ち合わせ時には不明点の説明や、その他今後の手続の説明などに時間をかけることができます。

そのためにも、事務所で設立のチェックリストのようなものを準備し、事前にクライアントにファックスやメールなどで交付して、打ち合わせ時までに記入しておいてもらえばスムーズに打ち合わせを進めることができます。

打ち合わせ当日は、このチェックリストに沿って、疑問点の説明や、まだ埋まっていない箇所の決定などをしていくことになります。

設立のチェックリストは、自分なりに工夫して作成してみるとよいですが、参考までに当事務所で使用しているものを掲載しますので、利用できる部分は利用してみて下さい。

株式会社設立チェックリスト
<発起設立・中小会社>

① 商号

② 本店所在地
(正確な記載をしてください 例 1―2―3 ×  1丁目2番3号 ○)

③ 目的

1.
2.
3.
4.
5.
6.

④ 株式の譲渡制限規定の有無

□あり(ありの場合以下から承認機関をお選びください)
・当会社の発行する株式を譲渡によって取得するには
( □代表取締役 □取締役会 □株主総会)の承認を要する

・( □代表取締役 □取締役会 □株主総会 )が第1項の承認をしない場合、
(□代表取締役 □取締役会 □株主総会 )は指定買取人を定めることができる。

□なし

⑤ 機関(役員)設計(※上記④で「なし」を選んだ場合は自動的に下記3となります)
□1、取締役
□2、取締役+監査役
□3、取締役会+監査役(取締役は3名以上必要となります)
□4、取締役会+会計参与(※他の会社類型でも会計参与設置可能)

⑥ 役員の氏名

(取締役)
氏名
氏名
氏名

(代表取締役)
住所
氏名                 生年月日     年   月  日

(監査役)
氏名

監査役の権限の選択  □会計監査権限のみ・□会計監査権限+業務監査権限

⑦ 取締役の任期(※上記④で「なし」を選んだ場合は自動的に2年となります)
年(原則は2年ですが10年まで延長可能です)

⑧ 監査役の任期(※上記④で「なし」を選んだ場合は自動的に4年となります)
年(原則は4年ですが10年まで延長可能です)

⑨ 役員の員数
取締役        名以内
監査役        名以内

⑩ 資本金
金                円

⑪ 公告方法

□官報
□その他新聞                新聞
□電子公告(電子公告を選択する場合には下記にURLを記載してください)

URL

⑫ 発行する株式数、発行金額

1株に付金       円

⑬ 発行可能株式数

⑭ 株券発行の有無
□発行する
□発行しない

「発行する」を選んだ場合、株券の種類を下記に記載してください。
1株券、    株券、    株券、    株券、    株券、

⑮ 事業年度
毎年    月    日

⑯ 最初の事業年度
平成   年   月   日まで

⑰ 発起人(最低1名必要)
住所
氏名
引き受ける株式数             株
出資金額                 円

(※2名以上いる場合には欄外に記載してください)

⑱ 設立希望日
平成   年   月   日

⑲ 登記完了後に取得する謄本等の通数
登記簿謄本 (実費480円+手数料1000円)×    通
印鑑証明書 (実費450円+手数料1000円)×    通

<必要書類(暫定的なもの)>
1、下記の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
取締役全員の印鑑証明書 各1通
発起人全員の印鑑証明書 各1通

※同一人が(代表)取締役兼発起人の場合、同一人の印鑑証明書は計2通必要
※印鑑証明書は事前にファックスをお願いいたします。

2、(※定款認証後)払込の記載のある通帳コピー、又は、金融機関発行の払込金保管証明書

3、会社実印の作成

4、代表取締役の身分証明書(免許証・パスポート等)

スケジューリング、具体的内容の打ち合わせ

次に、今回の手続のスケジュールを組んでいきます。

前述したとおり、会社設立登記手続きにはクライアントの協力も必要となりますので、スケジュールはクライアントの都合も考慮しながら組んでいき、目に見える形で共有することが必要となってきます。

スケジュールを目に見える形で共有することにより、クライアントにとっても手続きの進行状況や、自分が何をいつまでに行わなければならないかが分かります。

会社設立日から逆算して、各項目に日付を割り振っていけば、急がなければならないのか、ある程度余裕をもって準備出来るのかと言った感覚が見えてきます。

クライアントと共有するスケジュール表は、私の事務所で使用している簡単なものを掲載しますのでご参照ください。

株式会社設立登記手続のスケジュール
・会社概要(商号、目的、資本金、役員、決算期、その他定款の各条項)の聞き取り、打ち合わせ( / )

・商号調査、会社概要の確定( / )   ※網掛け部分はお客様に行っていただく部分です。

・会社実印の作成( / )
・印鑑証明書取得( / )
・資本金の払い込み( / )
印鑑証明書は取得でき次第、当事務所にファックス(メール添付も可)をいただきます。資本金は、発起人代表の口座に振り込みます。
資本金のお振込後、当事務所に振り込んだ通帳の表紙と該当ページのコピーをファックス(メール添付も可)いただきます。

・設立登記に必要な書類の作成( / )

・書類へのご捺印・必要書類原本お預かり・登記費用のご精算( / )

・公証役場での定款認証( / )

・法務局へ登記申請 ( / )

・登記完了・書類のお渡し

・銀行口座の開設、税務署への開業届等各種届出

スケジューリングが終わったら、具体的な内容を打ち合わせして決めていきます。

具体的な内容は、前述したとおり、設立チェックリストを基に各項目を埋めていきます。

この、各項目につきましても、それぞれ注意点がありますのでクライアントにきちんと説明できるようにしておきましょう。

それでは、各項目について実務上の大まかなポイントを確認していきましょう。

尚、以降は最もシンプル且つ相談の多い、発起人1人・取締役1人の株式会社の発起設立を前提に記載します。

商号

まず、会社の商号を決定してもらいます。

会社の商号は、経営者にとって思いを込め育てていき、広く認知してもらうための大切なものです。

なぜその商号を選定したのか、理由を聴いてみましょう。

経営者の考え方や今後の方針が見えてくるかもしれません。

商号を決定するに当たっては、以下の規制に注意しなければなりません。

(1)使用できる文字(商業登記規則50条、平成14年法務省告示315号)
・漢字、ひらがな、カタカナ
・ローマ字(ABC・・・XYZ)(abc・・・xyz)
・アラビヤ数字(0、1、2、3・・・9)
・アンパサンド(&)
・アポストロフィー(‘)
・コンマ(,)
・ハイフン(―)
・ピリオド(.)
・中点(・)

(2)使用が強制される文字(会社法6条2項)
商号には、その会社の種類により、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の文字を使用しなければなりません。

(3)使用が禁止される文字
・支部、出張所、支社、支店 ×使用できない(大10.10.21民事2223号回答)
・銀行、信託、保険 ×使用できない(銀行法6条2項、信託業法7条2項、保険業法14条2項)
・代理店、特約店 ○使用できる (昭和29.12.21民事甲2613号回答)

(4)同一商号の禁止(商業登記法27条)
既存の会社と同一の所在場所に同一商号の会社を設立することはできません。
以下の商号はすべて同一商号に該当しません。(平成19年7月6日日司連発第294号会社法Q&A)
・「株式会社A」と「A株式会社」
・「A株式会社」と「A合名会社」
・「大和」と「ヤマト」、「ABC」と「エービーシー」

以下はすべて同一の所在場所に該当します。
・「1番地の1」「1番地1」「1番1号」「1―1」
・「1丁目1番1号」「1丁目1番1号101号室」

(5)不正目的の商号
不正な目的で、他社と誤認されるおそれのある商号等を使用した場合、侵害の停止や予防の請求の訴えを提起されたり、損害賠償請求をされる可能性があります。(会社法8条、不正競争防止法3条、4条)

また、他人が登録した商標と類似した商号を使用した場合、商標権者から差し止め請求や損害賠償請求をされる可能性もあります。(商標法36条、38条)

類似商号の規制は撤廃されましたが、他社と類似した商号を使用することによる上記のリスクを考慮し、商号の調査を行うことが必要となります。

本店所在地

定款に記載すべき本店所在地は、最小行政区画である市町村まで(東京都の特別区を含みます。政令指定都市は市まで。)記載すれば足ります。

登記上は、最小行政区画以下全て表示されますので、正確な住所を聴き取らなければなりません。オフィスの賃貸借契約書などで確認しても良いでしょう。

ただ、賃貸借契約書などでは、「○丁目○番○号」のような正確な記載ではなく、ハイフンを使った省略形式になってしまっていることも多いので、その場合は市(区)役所の住居表示係に問い合わせると、正式な表記を教えてくれる場合もあります。

目的

会社目的の聴き取りは、クライアントの事業を理解する上でとても重要なものです。

どのような事業を行うのか、具体的に聴き取っていきます。

現在行っている事業のみではなく、将来行い得る事業も聴き取り、目的に記載するようにします。

ただ、あまりにも多くの目的を記載してしまうと、傍から見て何をやっている会社なのかよくわからなくなってしまいますし、金融機関の口座を開設するときも説明を求められることもあります。

漏れがあってはいけませんが、ある程度限定した記載にまとめることがポイントです。

また、許認可が必要な事業などは、目的にその事業が記載されていなければ許認可が受けられなくなってしまうこともありますので注意が必要です。

具体的に聴き取った後は、こちらで目的の記載に相応しい文言にまとめて、クライアントに確認してもらいます。

クライアントのイメージ(文言や並び順も含めて)と違っていたら修正を加えて再度確認してもらいます。

現在は、類似商号規制も無くなったことから、目的の具体性は法務局の審査の対象外となりましたが、明確性、適法性、営利性は依然として必要となりますので、その点に留意しながら目的を決定していきましょう。

株式譲渡制限規定

株式譲渡承認機関を決めます。設立チェックリストには「株主総会」「取締役会」「代表取締役」となっていますが、もちろん取締役会非設置会社の場合は「取締役の過半数の同意」でも問題ありません。

また「当会社の承認を要する」という規定でも構いませんが、この場合他に定款に承認機関を定めなければ、取締役非設置会社であれば株主総会が、取締役会設置会社であれば取締役会が承認機関となります。

今後、会社が発展していくと、株主の増加、取締役の変更、代表取締役の変更などある可能性も十分に考えられますので、将来的な展開も視野に入れて、どの承認機関が最適かクライアントとよく検討して決めましょう。

機関構成

今回は取締役1人を想定していますが、会社の機関設計(大会社を除く全株譲渡制限会社)としては以下のパターンがあります。

役員の氏名、住所

役員の氏名、住所は登記にもかかわりますので、正確な記載が必要です。
 
印鑑証明書が取得でき次第、ファックスやメールで情報をもらい、準備するようにしましょう。

取締役の任期

取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。
 
この任期は、定款または株主総会で短縮できます。(会社法332条1項)
 
また、非公開会社においては、定款で10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます。(会社法332条2項)
 
時々、中小企業の定款を見ると任期を短めに区切っておいた方がよいと思われるような会社が、安直に10年に任期を伸長していることがあります。
 
任期を伸長することによる将来的なリスクも考慮に入れて決定する必要があります。
 
みなさんはプロフェッショナルとして、クライアントに対して任期を10年に伸長するメリット・デメリットを説明できなければなりません。
 
まず、任期を10年にするメリットは、役員のメンバーに変更がない場合、役員変更登記が10年間不要であるということです。
 
もし、任期が2年であれば、役員のメンバーに変更がなかったとしても、2年ごとに重任登記の必要があり、そのたびに登録免許税(1万円または3万円)と司法書士報酬、その他実費の負担をしなければならなくなってしまいます。
 
中小企業にとって、何も生み出すことのない役員変更登記に数万円の負担をかけるのは無駄に感じられても無理はないでしょう。
 
一方で、任期を10年にするデメリットもあります。
 
例えば、ベンチャー企業(オーナー出資100%)で、設立後の業績が好調で業務を拡大するため、取締役を追加したとします。
 
その取締役と最初はうまくいっていたのですが、だんだんと馬が合わなくなってしまい、その取締役に対して就任後2年目に「辞任してほしい」旨を伝えました。
 
ところが、その取締役から辞任を拒否されてしまいました。
 
こうなると、会社側からその取締役を解任するしかありません。
 
解任すると何が起こるかというと、まず登記事項証明書に「解任」という文字が載ってしまいます。見る人が見れば、「解任」ということは内部紛争を抱えている会社なのだという印象を受け、会社の信用力の低下を招いてしまう可能性があります。
 
そしてもっと深刻な問題となるのは、10年の任期があるにもかかわらず2年目に解任された取締役から、残存任期8年分の損害賠償を請求されてしまう恐れがあるということです。
 
解任された取締役の損害賠償については、会社法339条2項で「解任された者は~解任によって生じた損害の賠償を請求することができる」と規定されています。
 
解任によって生じた損害には、残存任期分の役員報酬が含まれます。
 
また、残存任期分の役員報酬以外にも、退職慰労金や役員賞与も損害に含まれる余地もあります(類型別会社訴訟第二版 東京地方裁判所編 28項)ので、尚更注意しなければなりません。
 
任期については、このようなリスクがあるのだということも考慮しながら、その会社に合った任期設定をしなければなりません。
 
家族経営でこれからも外部から取締役が入ってくる余地のないような会社は任期10年でよいかもしれません。
 
今後、外部から取締役を入れていく会社は最初から2年程度にしておくか、または最初は10年で、取締役追加のタイミングで定款変更をして任期を短くするという方法がよいかと思います。
 
ちなみに、大企業(上場企業など含む)の中には、取締役の任期を短縮して1年にして、1年ごとに取締役を再任するか株主総会に諮っている会社も多く見受けられます。
 
経営者が、会社設立手続きを通して、このようなことを知っておくのと、知らないままでいるのでは、今後の会社運営に大きな違いが出てくるでしょう。

役員の員数

取締役会設置会社の場合、3名以上の取締役が必置となりますので、員数の上限のみ「○名以内」と定めても「3名以上○名以内」という意味合いになります。
 
また、取締役の員数は、定款で上限または下限を置くことができますが、実務上は上限を定めているケースの方が多く見られます。
 
上限を設けることによって、敵対的買収に伴う取締役の派遣を防止するための対策としておくことも考えられます。

資本金

資本金は1円から設立可能ですが、やはり多い方が対外的な信用力はあるといえるでしょう。
 
現実的にも、資本金が少なければ、事業を行うにもすぐに役員からの借入金などで賄わなければならなくなってしまいますので、できるならある程度の資本金とした方がよいでしょう。
 
また、資本金を1000万円以上にすると、設立1期目から消費税の課税事業者になってしまいますので注意が必要です。
 
以下、国税庁タックスアンサー参照
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6503.htm

公告方法

公告方法は、(1)官報に掲載する方法(2)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法(3)電子公告を定めることができます。(会939条)
 
この中で、中小企業の大多数は官報を選択しています。一般的に官報は公告費用が安価だと言われているのが大きな理由でしょう。
 
また、決算公告に関して、官報及び日刊新聞紙の場合は、貸借対照表の要旨を公告すれば足りるのに対して、電子公告では貸借対照表の全文を公告しなければなりません。(会440条2項)全文の開示では、他社に見られたくない部分も開示することになってしまう可能性もありますので、その点も注意しなければなりません。
 
以上のように、公告方法にはそれぞれメリット、デメリットがありますので、その会社に合った公告方法を選択するようにしましょう。

発行する株式数、発行金額

株式の発行金額は、特に規定はありませんが、旧商法の1株5万円時代に倣って5万円というケースが多いようです。また、単純に1万円とするケースもよく見受けられます。
 
将来的な株価の上昇を見込んで、一株当たりの価格を低くして、当初から細分化するケースもあります。

発行可能株式総数

公開会社の場合は、設立時発行株式の総数の4倍を超えることができません。(会37条)
 
非公開会社の場合は、上記のような制限がありませんので、今後その会社がどの程度増資する可能性があるかを聴き取り、必要な枠をとっておきます。
 
どの程度の枠をとっておけばよいか、判断しにくいようなときは、私の事務所の場合は、設立時発行株式総数の10倍程度に設定しています。

事業年度

事業年度は、前記⑨資本金との関係で免税事業者となる場合は最大で2期消費税が免除されることも考えると、2期を最も長くとれるように設定するというのが一つの考え方です。
 
つまり、設立した月の前月に当たる月(たとえば10月設立であれば9月)を決算月とすると一番長い期間が確保できます。
 
それから、繁忙期のある業態であれば、繁忙期を避けるというのも一つの方法です。
 
会社は原則的に決算月から2カ月以内に税務申告をしなければなりません。
 
棚卸や決算関係書類の準備などが繁忙期と重なってしまうと大変ですので、その点を考慮して決めるのも良いでしょう。

設立日

会社の設立日は会社の誕生日です。
 
会社設立登記は、登記が効力要件ですので申請したその日が設立日になります。登記簿にも未来永劫、会社成立の年月日として記載されることになります。
 
特に設立日にこだわらないクライアントもいますが、何かの記念日や縁起の良い日に合わせて設立したいというクライアントも多くいます。
 
もし我々が取下げを要するようなミスをしてしまったら、クライアントはもうその設立日を2度と選択できなくなってしまい、取り返しのつかないことになってしまいます。
 
万が一にも、そのような事態のないようにするのが我々プロフェッショナルの仕事なのです。
 

登記完了後に取得する謄本等の通数

登記完了後は、きちんと申請通りの登記がなされているか、不備は無いかの確認を行うため、登記事項証明書、印鑑証明書を1通ずつ取得します。
 
それに加えて、クライアントの側で税務署や金融機関、取引先などに提出するために複数通必要であれば、それと同時に取得する通数を聴いておきます。
 
登記事項証明書等を複数通取得するのに、取得報酬を加算する場合には、後々のトラブルを避けるため、事前にクライアントの了解を得ておくとよいでしょう。

商号調査、会社内容の確定

商号が決まったら、前述のとおり同一商号、類似商号の調査をします。
 
調査は、登記情報提供サービスのキーワード検索、または法務局の商号調査端末を使って行います。
 
また、既存の商号と類似したものを使用してしまった場合は、不正競争防止法により訴えを起こされてしまうリスクもありますので、上記の調査以外にも、一般の検索エンジン(グーグルなど)でも商号が類似していて業務が同じような会社が無いか念のため確認しておくとよいでしょう。
 
既に商標登録されている商号も、差し止め請求や損害賠償請求をされる危険性もありますので、特許庁の商標データベースに記載されていないかどうか調べておくことも大切です。
 
商標については、特許庁の商標出願・登録情報の検索ページから調査出来ます。
 
特許庁 商標出願・登録情報検索(検索画面)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage

会社実印作成、印鑑証明書取得、資本金払込

商号を含めて、会社概要が確定したら、クライアントに会社実印の作成、発起人・役員の印鑑証明書の取得、資本金の払込を行ってもらいます。
 
まず、クライアントに会社実印を作成してもらいます。
 
前述のとおり、会社設立登記申請日までに会社実印の作成が間に合わない場合は、取り敢えず個人印などを代用し、後日印鑑登録の変更をすることも考えられます。
 
会社実印の作成は、こだわらなければ早い印鑑屋では1日で作成できますので、そのような印鑑屋を見つけておくといざとなった時に役立ちます。
 
印鑑屋に行くと、会社実印と銀行印と角印の3点セットなどがあり、クライアントの必要に応じて作成してもらいますが、登記手続で必要なのは、このうち会社実印のみとなります。
 
会社実印の作成と並行して、発起人や役員について、必要な印鑑証明書(本人確認証明書で使用する場合はその分を含む)をクライアントに準備してもらいます。
 
印鑑証明書は発起人や役員の正確な住所氏名を把握するため、準備でき次第、事前にファックスやメールで情報をもらっておくとよいでしょう。
 
資本金の払込に関しては、原則として、定款認証後となりますが、発起人の同意(会32条1項)により出資金額を定めた後、または定款作成後であれば定款認証前の払込も有効とされています。本書で提示しているスケジュールも定款認証前に払込みを行うパターンとしています。
 
払込は、原則として発起人代表名義の口座によることになりますが、その通帳に記載された払込名義人が発起人名と一致しない場合(ただし、金額は一致する)や、そもそも直接入金のため名前が記載されない場合でも問題ないものとされています。(平成19年7月6日日司連発第294号会社法Q&AQ36)
 
注意しなければならないのは、あくまで「設立のための払込」が必要なので、発起人の口座に払込金相当額の残高があるだけでは足りず、その残高を利用する場合には、いったん預金を払い戻して、再度設立のための払込をする必要があります。
 
払込金額は、会社に対する出資用の入金と、他の用途の入金を同時に行い、出資に関する金額以上となってしまっていても差支えありません。(松井信憲著「商業登記ハンドブック第2版」113項)
 
払込取扱機関はネット銀行でも構いませんが、その場合、取引状況に関するインターネット上の画面をプリントアウトしたものに、金融機関名、口座名義人、振込日、払込金額が記載されていれば差支えありません。(神崎満治郎、金子登志雄、鈴木龍介編著「商業・法人登記300問」110項)
 
資本金の払込が終わったら、通帳の表紙と払込のあったページ(ネット銀行の場合は画面のプリントアウト)を印鑑証明書と併せてファックスまたはメールでもらうようにしましょう。

捺印書類作成

印鑑証明書のデータ、払込通帳コピーなどを入手したら、捺印書類を作成します。
 
私の事務所では、印影がうまく出なかった場合に備えて、また、1部は登記申請用、1部は会社保存用として保管するため、各書類を2部ずつ作成するようにしています。

捺印、必要書類原本の預かり、登記費用の精算

捺印書類に会社実印、個人実印などの捺印をもらいます。
 
また、準備してもらっている印鑑証明書などの原本も受領します。
 
この後、定款認証・登記申請と、公証役場への認証手数料や登録免許税などの実費がかかってきますので、このタイミングで登記費用を精算します。

定款認証

次に、公証役場にて定款認証を行います。
 
紙での定款認証だと4万円の収入印紙の貼付が必要となりますが、電子定款認証により収入印紙が不要となります。
 
もちろん、司法書士の場合電子定款認証の申請によることになります。
 
認証を受ける公証役場は、設立する会社の本店所在地を管轄する法務局の本局に属する公証役場であることに注意を要します。
 
たとえば福岡での会社設立を受任した場合、定款認証は福岡法務局に属する公証役場で行う必要があります。
 
公証役場での定款認証後、クライアントからの定款作成の委任状、印鑑証明書を持って、公証役場に電子定款データと同一情報を受け取りに行かなければならないため、遠方での認証になる場合はその旅費や日当についてあらかじめクライアントに説明し、了承してもらっておくことが重要です。
 
場合によっては、クライアント自身に公証役場に足を運んでもらうこともありますので、遠方での認証の場合は事前に十分な打ち合わせを行いましょう。
 
参考までに、当事務所における公証役場での定款認証の手続きの流れをご説明します。
 
定款認証の手続に関しては、公証役場ごとに取扱いが異なることがありますので、実際に認証を受ける公証役場に、事前に確認しておくことをお勧めします。

① 定款認証日前に、電子定款作成の委任状、定款、発起人の印鑑証明書を公証役場に事前にファックスし、内容に問題がないことを確認しておいてもらいます。

② ①で内容に問題が無ければ、定款認証日当日、オンラインで電子署名を行った定款を公証役場に送信します。

③ 公証役場から定款認証手続きの完了の連絡を受けたら、公証役場の窓口まで足を運び、電子定款作成の委任状(定款を合綴したもの)、発起人の印鑑証明書、定款認証手数料(5万円)、同一情報取得費用(2部で2000円~3000円程度)を窓口で提出し、認証後の定款データ、書面による同一情報を受領します。
定款データは、CD-Rなどの媒体に格納されて渡されますが、公証役場の方で媒体を用意してくれる所もありますし、司法書士が持参しなければならない所もありますので、事前に確認しておきましょう。
 
尚、補助者が認証後の定款を受け取りに行く場合は、司法書士から補助者に対する委任状及び司法書士の印鑑証明書も持参する必要があります。
 
公証役場によっては、司法書士が電子署名した委任状をメールで事前に送付することで対応してくれる公証役場もありますので、これについても事前に確認しましょう。
 
電子定款認証の具体的な方法については、法務省のホームページにも記載があります。
 
法務省HP 電磁的記録の認証(定款を含む私署証書の認証)の嘱託
http://www.moj.go.jp/MINJI/DENSHIKOSHO/denshikosho1-2.html

設立登記申請

定款認証が終わったら、後は登記申請日を待つのみです。
 
設立予定日に確実に登記申請をしなければなりません。
 
クライアントにとって設立日は重要です。
 
取り下げを要するような間違いなど無いように、最後にもう一度登記申請の内容を全て見直して登記申請をしましょう。
 
また、印鑑カードの交付申請は、登記完了後に窓口または別途郵送で行うのが原則ですが、登記申請時、添付書面を郵送する場合、印鑑カード交付申請書及び返送用封筒を同封しておくと、登記完了後に郵送する取扱をしてくれる法務局がほとんどです。(※法務局によっては、厳密に別送しか認めない所もあります。)

登記完了、書類のお渡し

登記申請から、約1週間から10日前後で登記が完了します。
 
打ち合わせ時に確認した通数の登記事項証明書、印鑑証明書を取得し、会社保存用の書類とともにお渡しします。
 
会社印鑑カードもこの時にお渡ししますが、法務局での印鑑証明書の取得方法を簡単にレクチャーしておくとよいでしょう。
 
というのも、クライアントは、会社の印鑑証明書は個人と同様で市(区)役所で取得するものだと思っている場合が少なくなく、「間違えて市(区)役所に取りに行ってしまった」という話もよく聞きますので、そういったことの無いように事前に注意喚起しておくとよいでしょう。
 
ここまでで登記手続はほぼ完了ですが、ここで皆さんの仕事は終わりなのではありません。
 
設立登記完了後は、クライアントが実際に会社運営をしていくことになるのです。
 
その中で、契約書の作成、第三者からの出資、株式の譲渡、組織再編、定款変更、役員変更、不動産の購入、取引先とのトラブル、金融機関からの借入、などと言った、あらゆる法律課題に直面することになります。
 
我々司法書士がプロフェッショナルとして、そのような課題に対し、法務面からのサポートが出来ることをあらためて案内し、いつでも相談に乗れる旨伝えることが重要です。
 
設立間もない会社は、顧問弁護士などを付ける余裕もありませんし、誰に法務面のサポートを受けて良いのか分からない状態です。
 
そして、我々司法書士が法務面でのサポートが出来るのだということを認識していないことも多々あります。
 
また、設立登記手続きを通して、司法書士が法務面のプロフェッショナルであることをアピールできたとしても、クライアントにとって、具体的にどのような相談が出来るのか分からなければ、いざとなった時に司法書士に相談して良いものなのか分かりません。
 
クライアントにとっていつでも頼れるプロフェッショナルであるために、この機会に、みなさんの事務所で具体的にどんなことが出来るのか、しっかりと案内をしておくことが大切です。
 
口頭で説明することも大事なのですが、後に残る形で、会社向けの業務案内などを準備しておき、クライアントに渡しておくなどの工夫をするとよいでしょう。
 
クライアントにとって、身近に頼れるプロフェッショナルがいることは大変心強いでしょう。
 
このような最後のひと工夫が、会社設立登記手続から企業法務へのかけ橋となるのです。

このコンテンツは『司法書士研修ノート~開業・業務・事務所運営 実務アシストプログラム~/司法書士安井大樹 著』の内容に若干の編集を行い、その内容の一部をご提供いただき公開したものです。
掲載している内容は、発刊当時(平成26年)のものとなります。現在の実務とは一部異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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